シスターの渡辺和子さんが遺した言葉、「置かれた場所で咲きなさい」。高校の卒業式のメッセージとして送られた言葉に対し、疑問を感じる出来事があった。置かれた場所で咲くためには努力が必要だが、置かれた場所が全てではない。自分に適切かを考え、咲くことのできる場所を探しに行くことも必要ではないかと強く感じるのだ▼1年前、時給が高いという理由で始めた初めてのアルバイトは、ふたを開ければ勤務形態がブラックなアパレルショップだった▼勤務が始まる10分前に行かなければ出勤を促す着信が10件以上入り、売り上げに貢献できなければ物置小屋で1時間半も怒られた。頭の中に音楽を流して耐えていたが、たった1時間の休憩時間さえも苦行の時間で息が詰まりそうだった。店長を避けて休憩をしたことが何度もあるが、その度に店長と話を合わせられないことに罪悪感を感じ、自分を責めた▼辞めるまでに4カ月を要した。続けた理由は私にはこのバイト以外できないのではないか、待っていれば職場環境が改善されるかもしれない、自分が悪いのではという思いがあったからだ。過酷な労働環境で精神的に追い詰められてしまう人の中には「置かれた場所で咲けない自分が悪い」と考える人もいるのではないか。その土壌で我慢し続けると自分という花が枯れてしまうことも考えられるのに▼1年前の自分に伝えたいことがある。置かれた場所で咲く努力だけではなく、本当に咲くことができる場所を探す勇気も必要なのだと。 【川村嶺実】