最近テレビでよく外国人労働者の話を耳にする。京都に大阪、街を歩けば外国人の観光客であふれかえり、コンビニで外国人の店員を見かけるようになった。これは今まで無かった光景だ。外国人と関わることが普通になりつつある▼数ヶ月前、祖父母の喫茶店に一人の外国人が来店した。席へ案内しようとしたが、見知った顔であることに気付いた。来客は20年ほど前に出稼ぎのために来日し、祖父母の店で働いていたパキスタン人だった▼彼は少しの間しか働いていなかったが、家族に稀有な思い出を授けた人だった。外国人が珍しい時代に忙しかった喫茶店を手伝い、大いに盛り上げた。厨房に入ればカレーをスパイスの効いた本場の味に変えてしまった。彼は数カ月の間働き、予期せぬ理由で国へ帰った。その後は家族でイギリスに移住し幸せな生活を送っている▼外国の文化とは縁遠い祖父母たちとともに生活した。彼は家族の成長を少しの間見届けた。英語とは違う外国語を教えてくれたり、日本とは異なる宗教のしきたりや文化を奥深さを身を持って伝えてくれたりした▼これからもさまざまな理由で日本に移り住む人が増えるかもしれない。そのとき祖父母たちのような平凡な家族と外国をつなぐ縁が増えると思うと、世界は広くなったのだろうなと感じる。人を思う心や感謝の気持ちは国を越えて誰でも持ち合わせるているものだ。思いやりや思い出に国境はない。そう感じる出来事だった。 【川村嶺実】