地殻変動に合わせて11年間をかけ琵琶湖が20センチ以上移動し、およそ3センチ縮小した。この「大移動」は熊谷道夫氏(理工学部教授)率いる琵琶湖研究 チームの湖底探査により判明した。さらに湖底の隆起している部分から、ベントと呼ばれる気泡状の水煙が拡大していることもこの調査で分かった。
【5月6日 NEWS立命=UNN】
熊谷教授は、国土地理院が設置するGPS(衛星利用測位システム)のうち、琵琶湖周辺の6地点で2002年から11年間の変動を解析してきた。その結果、湖西側の高島市が東南方向に23.2センチ移動し、湖東側の彦根市も同方向に20.6センチ移動していたことを発見した。 移動や縮小の原因には琵琶湖を挟む西岸断層帯と鈴鹿東縁断層帯の2つの断層の働きが関係している。これらが押し合うことによって移動や縮小が起こった。
今、琵琶湖はゆっくりと縮んでいる。「湖底の濁度が琵琶湖の縮むスピードと関係ありそうだ」とおよそ30年間琵琶湖について研究している熊谷教授は話す。遠い将来、このままプレートが移動することで琵琶湖が消滅あるいは太平洋に到達し海となることも予想される。
湖底からのベントという水煙の噴出が自立型水中ロボット「淡深」による撮影で判明した。2009年に初めて確認してから2012年まで、急激に水 煙の噴出範囲が拡大してきている。琵琶湖周辺に配置されたGPSの情報と併せて解析することによって、琵琶湖収縮に伴ってベントが噴き出すことを明らかに した。しかし水煙の成分や、琵琶湖の生態系への影響はまだ解明されていない。現在、熊谷教授はこの水煙にまつわる謎を解明すべく調査を続けている。
熊谷教授は「この琵琶湖の動きは何かの変化の兆しではないか」と慎重に述べた。近年日本で頻繁に起こる地震。地殻は活発に動いている。年間わずか3ミリ程度の移動とはいえ、着実に動きつつあるこの大きな湖の変化を無視することはできない。