有意義な学生生活を見いだす場として建てられた凜風館は活気に満ちあふれている。中でも交流の場として広く利用されているのが、キャンパス最大の学生食堂と本格的なベーカリーカフェ。120本の桜が植えられた屋上庭園は春になると多くの学生が花見に訪れる名所だ。今回は凜風館の憩いの場3カ所に着目した。【元川紬】
学生の満足が前提条件 大きな学生食堂の裏側
凜風館で最もにぎわっている、ダイニングホール・ディノア。千里山キャンパス最大の食堂で、座席数は約1000席、メニューは100種類以上に及ぶ。昼休みは空席を探す学生が目立ち、大混雑は日常茶飯事。総勢約70人の従業員がせわしなく働き、安心安全な食事を安価で提供する。
運営元は関西大生活協同組合。全国大学生活協同組合連合会に属さず、独自企画やメニューを開発する。単独運営のため、食材の確保や管理、価格交渉、メニュー開発に苦労するという。名物の関大プリンは独自メニューの一つだ。全卵を使用する市販品と異なり、卵黄のみを使用するぜいたくなプリンは1個180円。たとえ利益を減らしても、学生の満足が前提条件という。
従業員は仕込み、調理、盛り付け、洗浄、ホール、レジに分かれて働いているが、ピーク時は役割と関係なく作業する。従業員同士で協力し合い、キャンパス最大の食堂を円滑に運営している。
健康意識を高める狙いの100円朝食は2年前から始まった。赤字を出していたが、今年から大学の援助が始まり、来年以降も継続可能に。メニューを改良し、1食の売価は400円で設定されている。試行錯誤を重ね、味や価格だけでなく健康に考慮した食事を提供している。関大生活協同組合の尾形恒さんは「カップ麺を食べるくらいなら、健康のためにも食堂で安価なうどんなどを食べてほしい」と熱弁する。
魚離れが叫ばれる中、秋学期の開始と同時にサンマの塩焼きの販売が始まった。豚汁付きの定食は450円とお買い得だ。定食を食べた田中早希さん(文・ 2年)は「肉より割高な印象の魚が、安く手軽に大学内で食べられてうれしい」と笑顔で話した。販売期間は10月末までの予定。


プリンの焼き上がりを知らせる尾形恒さん(撮影=元川紬)
大学内でカフェ気分 本格的な焼きたてパン
本格的な焼きたてパンを安価で提供する、ベーカリー&カフェサンメード。約100席を有し、パンやサンドイッチだけでなく、ドリンクやソフトクリームも販売する。学内でカフェ気分が味わえると好評だ。
パンは1次発酵が済んだ冷凍生地を仕入れ、2次発酵からは通常のパン屋と同じ手法で製造。冷凍生地は大手パンメーカーが開発したもので、毎日焼きたてを提供する。学生向けのため、安価で財布に優しいのも魅力だ。
売れ筋商品はマスクメロン餡(あん)とホイップクリームを挟んだ関大メロンパンや季節の企画物といった季節に合わせて作っているパン。今秋のフェアでは角切りのリンゴとアールグレイ茶葉が練りこまれた、香りも楽しめる紅茶アップルカスタードドーナツが人気を集めている。
期間限定で販売するドリンクや、ソフトクリームにトッピングをしたサンデーは店長発案のオリジナルの商品が多い。タピオカが入った「氷いちごみるく」を販売。中には赤ジソを振り掛けられた、甘辛い味わいの珍しいサンデーも。店長の藤田知子さんは「学生の喜ぶ顔のために、冒険しすぎない程度の驚き要素を大切にしている」と語る。店を訪れた蓮井美希さん(社・2年)は「パンはおいしいし、友人としゃべるだけでなく、1人で勉強をするにも居心地が良い」と話した。

焼きたてパン(撮影=元川紬)
地球に優しい屋上庭園 関大生癒やしの空間
緑あふれるキャンパスとの融合を目指す凜風館には大規模な屋上庭園がある。合言葉は地球に優しい建物。快適な空間と環境に配慮したキャンパスの実現のために、数々の工夫を凝らしている。
120周年事業にちなんで植えられた120本の桜を中心に、ツツジやヤナギの木で屋上の全面を緑化している。都市の気温が郊外よりも高くなるヒートアイランド現象の抑制にもつながり、快適な空間に。室内外の温度差を減らし、冷房や暖房の使用を減らす効果もある。またエネルギー消費の増大によって大気中の温度を上昇させる熱汚染を防いでいる。
さらに省エネルギー化を目指し、雨水を植物の水まきに利用するシステムで水資源を有効活用。水まきのタイマーも太陽電池で動かしている。また自家発電を行うために9台の風力発電機を設置。都心のわずかな風でも発電できる小型の風車を使って、屋上の限られた空間でも効率よく運用する。発電した電力は主に凜風館で使用し、余った電力は他のさまざまな施設に供給している。
多様な草木が彩り、季節の訪れを知らせる屋上庭園。晴れの日は多くの人が昼食を取ったり、日なたぼっこをしたりする。ゆっくり過ごせるベンチが設置され、憩いの場として愛されている。梅田まで一望できる景色も評判だ。有田由希さん(商・3年)は「自然と触れ合うことが癒し。気分転換したいときに訪れる場所です」 と話した。

昼食を取る学生ら(撮影=元川紬)
◆凜風館とは
2006年に創立120周年事業の一環として、コミュニケーション広場の創出を目的に建設された総合学生会館。同系色で配列されたストライプ柄のタイルがおしゃれな建物は、竹中工務店が設計施工した。建物上部の外壁面には、からくり装置「カリヨン」を設置。校章をあしらった扉が定時になると開き、ベルが揺れながら学歌を演奏する。フロアは、1階がオープンスペース、2階が学生食堂、3階が物販店や美容院、4階が課外活動専用施設で構成される。屋上には庭園があり、学生の憩いの場として愛されている。