【7月号】三叉路

 携帯の写真を整理していると、いつか友達と食べたパンケーキの写真が出てきた。本来私は外出先で料理の写真を撮らない。出来たてのうちに食べたほうがよりおいしく食べることができるからだ。しかしパンケーキの写真は友達につられて、つい撮ってしまった▼なぜ最近の若者は料理の写真を撮ることに時間をかけ、こだわるのだろうか。「見ておいしく撮って、後から思い出したい。家族に見せると話が盛り上がる」と友達は言った。おしゃれな写真を撮るためだと思っていた私は驚いた▼日本では古くから「見ておいしい」にこだわってきた。例えば和菓子は、季節に合わせた花や動物の形をしている。透き通ったようかんからカラフルな金平糖まで見た目の表現はさまざま。見た目のおいしさに食べることがもったいないと思ったことはあるだろう。私は幼稚園のとき、母が作ってくれたキャラクター弁当を食べることが惜しかった。おいしそうな料理を、目で楽しみたい気持ちは今も昔も変わらないのだろう▼写真が気軽に撮られない時代は、どれだけきれいな料理でも食べてしまえば、全く同じものはもう見られない。そして誰かに見せることもできない▼今では匂いや温度まで伝わってくる「おいしい写真」が撮られる。一眼レフカメラを使う人も増えているようだ。「見ておいしい」、「食べておいしい」だけの時代はもう古い。今は「見ておいしい」、「食べておいしい」、そして共有しておいしさを分かち合う時代だ。今度は私もおいしい写真に挑戦してみたい。【泉田菜花】