_国内で再生医療手術 1月に澤芳樹教授(心臓血管外科)がカタールから来日する患者を担当。心筋が薄くなり血液を送り出す力が弱くなった患者の心臓機能を、太ももの筋肉細胞を培養して製造した再生シートを貼り付けることで復活させる。また、口内の粘膜細胞を培養し角膜の病気で失明の恐れがある患者の目に移植するという西田幸二教授(眼科)の技術や、ひざの細胞を用いた軟骨再生も検討。カタール側は、日本から派遣する医師の現地でどのように免許が扱われるかなどを調整中だ。 進出の拠点となるのは、首都ドーハの病院に設置予定の「再生医療・細胞シートセンター(仮称)」。カタール政府が出資する財団によって、2015年にも設置される見込みだ。日本の官民共同設置の「メディカル・エクセレンス・ジャパン」や医療機器メーカーが運営や細胞の空輸で連携する。 _公正な資金運用を 再生医療は治療費が数百万円と高額に上ることが多く、阪大にとっては国際進出に対する採算を取りやすい。阪大は再生医療事業で得た収入を今後の研究に生かす考えだ。医学部3年の学生は「再生医療は世界的に注目されている分野。事業収入を公正に運用し、研究発展に役立ててほしい」と話した。 _日本初 死因究明学コース開設 阪大は昨年12月26日、全国で初めて修士課程コースに「死因究明学」を設置することを発表した。2014年度に教員採用や学生募集を開始し、2015年春に開講する。 死因究明学は法医学の一分野で、犯罪や医療ミスなどによる死亡者の見落としを防ぐ専門家の育成を目的とする。警察の取り扱う変死件数は毎年増加中で、2012年にはおよそ17万4000件に上った。そのうち解剖件数はおよそ1万9000件にとどまり、解剖しないまま事件性は無いと判断されたが、後に殺人と判明した例も発生している。医療行為に関連する死亡件数も年間で2~3万件に上ると推定されるが、多くは死因が明らかにならず、医療ミスは発覚しにくい。 死因究明が少ない最大の要因は、人員不足。解剖を担当する法医学者や監察医は全国で200人に満たない。死因究明学を担当する松本博志教授は「日本の死因究明のシステムは欧米諸国に比べ遅れている。専門家を育成し、死因がきちんと分かる社会の実現に貢献したい」とコメントした。