新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大阪大は3月9日、入学式と新入生向けオリエンテーションの開催を見送ると発表した。卒業式・大学院学位記授与式が規模を縮小して行われた他、学内での合同企業説明会やシンポジウムが相次いで中止された。【田中穂乃香】

 入学式は行わないが、公式 ウェブサイト上に4月1日、 西尾章治郎総長からの新入生に向けたメッセージを掲載する予定だ。

 大阪城ホール(大阪市中央区)で3月25日に予定されていた卒業式・大学院学位記授与式は、卒業生・修了生やその家族が集まる形ではなく、学部・研究科の代表者のみが出席して、吹田キャンパスのコンベンションセンターで行った。

 総務課の担当者は卒業式の規模縮小や入学式開催の見送りについて「分かる範囲では初めて。参加を予定していた皆さんの健康と安全を第一に考えた判断」と話した。入学予定者からは「いつから大学に行けば良いのか」と問い合わせがあったといい、大学の公式ウェブサイトで最新情報を確認するよう求めている。

 キャンパスライフ健康支援センターは、春の学生定期健康診断はウェブ問診のみとすると発表した。新入生と一部の学生には胸部レントゲン検査を行うものの、尿検査や血圧測定は実施しない。ウェブ問診の回答期間は4月6~27日。4月6~8日に胸部レントゲン検査を受ける新入生に対しては、検査の際にマスクを着用するよう呼び掛けている。

 新型コロナウイルスを巡って阪大は、2月12日に公式ウェブサイト内に特設ページを設け、対応状況を随時更新している。阪大が主催するイベントの参加者に向けたメッセージや感染症予防のためのアドバイスの他、学生や教職員に対しては海外渡航に関する注意喚起や課外活動の自粛要請などを掲載している(3月17日時点)。また感染拡大防止のため、2月下旬ごろから、退職する教授の最終講義や市民向けのイベント、専門家を迎えて行うシンポジウムなどを相次いで延期、中止した。

阪大の研究力で治療法探る

 阪大発のベンチャー企業で、バイオ製薬を手掛けるアンジェス(大阪府茨木市)は3月5日、阪大と共同で新型コロナウイルスの予防用DNAワクチンの開発に着手すると発表した。麻疹や風疹の予防に用いられる弱毒化ワクチンと異なり、病原性を全く持たないDNAを接種するため、より安全に免疫を付与できる。

 阪大蛋白質研究所は公式ウェブサイトに3月11日、特集ページを設け、新型コロナウイルスのタンパク質構造情報を公開している。対応言語は日本語、英語、韓国語、中国語だ。タンパク質の構造情報を正確に集約して発信することで今後の創薬研究につながるという。