
大阪大交響楽団は9月2日、世界的に活躍するバイオリニストの五嶋龍氏と、北朝鮮による拉致問題の解決を訴えるチャリティーコンサートを豊中市立文化芸術センターで開いた。会場となった大ホールには1200人以上の聴衆が集まった。
当日はまず、交響楽団がベルディの歌劇「運命の力」序曲とチャイコフスキーの弦楽セレナーデハ長調Op.48を演奏。メロディーを奏でるバイオリンや低く優しい音色のコントラバス、力強いティンパニなど、全員で息の合った演奏を披露した。
休憩を挟んだ最終曲、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲ニ長調Op.35。割れんばかりの拍手の中、五嶋氏がソリストとして登場。圧巻のテクニックを見せつけた。
最終曲でコンサートミストレスを務めた村上絢子さん(外・3年)は、公演後「(終わって)安心。五嶋さんと共演できて光栄で、私たちがこれから音楽をやっていく上でのモチベーションになる」と話した。団長の石田瑞穂さん(医保・3年)は「多くのお客様に聴いてもらえてよかった。今日の演奏を楽しんでもらえていれば」と語った。
◇若い世代 拉致の解決訴え
コンサートの副題は「project R“拉致被害者を忘れない。”」。五嶋氏は「拉致は母が関心を持っていた問題で、今を逃せば交渉のチャンスがなくなってしまう」と、今回の公演を企画した思いを話す。学生との共演は、若い世代も拉致に関して問題意識を持っているとアピールしたいからだという。
当日は、拉致問題について書かれた冊子を配布。ホール前のホワイエには問題について解説するパネルも並んだ。公演の収益は「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)に寄付する。石田団長も「今日をきっかけに、拉致問題について少しでも考えてもらえたら」とコメントしている。
【前山幸一】
◆五嶋龍氏(ごとう・りゅう) 米ハーバード大卒。バイオリンのソリストとして世界各地のオーケストラと共演する一方で、中南米・アジアなどでの教育・国際文化交流にも取り組む。2015年10月~17年3月には「題名のない音楽会」(テレビ朝日系)の司会も務めた。29歳。米ニューヨーク出身。