【11・12月号掲載】チンパンジーの寿命算出 国内の大規模データから

 野生動物研究センターの平田聡教授(比較認知科学)らのグループは、日本国内で飼育されているチンパンジーの平均寿命を算出した。算出された平均寿命は28・3歳。一国で飼育されるチンパンジー全個体を対象にした大規模データに基づくチンパンジーの寿命の算出は世界初。成果は10月4日に、学術誌「プリマーテス」にオンライン掲載された。

 研究グループは「大型類人猿情報ネットワーク」が収集した記録を使い、過去約100年に飼育された1017個体のうち、必要な情報のそろった821個体から平均寿命を算出した。出生後1歳までに死亡する割合が21%と1歳以降の各年齢に比べて高いことが影響しており、1歳まで生存した個体の寿命は、平均34・6歳だった。大人とみなせる12歳まで生存した個体では、平均で40・4歳だった。

 平田教授は「今回、チンパンジーの平均寿命について大規模データから信頼できる結果が得られた。ヒトの加齢や老化について調べる手掛かりになる」と話す。飼育されているチンパンジーの寿命については海外でいくつか報告があるが、信頼できるデータはこれまで得られていなかった。

 チンパンジーは進化の観点で見るとヒトに近縁で、チンパンジーの寿命の解明はヒトが生活を進化させた過程の分析に役立つ。研究グループは今後、チンパンジーの加齢の様子や死亡率の変遷をヒトのデータと比較して、ヒトの生活史について考察を深めたいとしている。

【大林嵩幸】

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