【1月号掲載】コラム・知恵袋
1989年末、日経平均株価は3万8915円という史上最高値を付け、東京証券取引所は大納会を迎えた。バブルという華やかな時代があったと知った私はその時代に生まれたかった、とうらやましく思っていた▼バブル崩壊後、失われた20年と呼ばれる不景気の時代になるが、ここ最近の社会はどうだろう。大阪の登美丘高校の学生が荻野目洋子さんのヒット曲に合わせてバブル風のダンスをする動画がヒットし、紅白歌合戦にも出場した。東京に行ったら冬恒例のJR東日本のスキー旅行を宣伝するポスターが貼ってある。例年は若手女優が起用されていたが、今年は30周年記念ということで30年前の映画「私をスキーに連れてって」とタイアップ。日経平均株価も2万円台を維持し、バブルの時代に戻ってきたかのようだ▼景気がいいと就職活動も楽になるし、私もそのほうがうれしい。今の雰囲気が社会が明るくなってきたことの証ならば大変結構なことだ。でもただ昔は良かったというだけの懐古ならばなんとなく薄気味悪い。未来に不安を抱いていることの裏返しな気がする▼移り変わりの激しい現代。昔は良かったというのは簡単だし、良かった点もあるだろう。でもいくら求めても過去は戻らない。どんな荒波が待ち受けていようが未来に生きないといけない。いや違う、自分たちの手で希望にあふれる未来を創造するんだ――そのためには今もっと勉強しなければならないのかなと思った。
【田林航】