酵母の耐熱性向上 バイオエタノール生産コスト削減へ
農学研究科の植田充美教授らの研究グループは、高温条件下で人工的に適応進化させた酵母のゲノムを解析し、熱への耐性に関わる因子を特定することに成功したと発表した。酵母による発酵を利用したバイオエタノール生産の迅速化、およびコストの削減に貢献でき、既に工業的に実用化の話も持ち上がっているという。本研究結果は3月17日発行の英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
通常バイオエタノールの生産では、発酵やエタノールの蒸留時に熱が生じ酵母へのストレスになるため冷却が不可欠。しかし低温に保つコストは大きく、大量生産の障害になっていた。今回植田教授らが発見した熱耐性因子を持つ酵母を用いることにより、高温で迅速に反応を進めることができコストの大幅な削減が可能。さらに生産量においても、野生株と比較すると、バイオエタノールの一般的な原料であるグルコースからは2.5倍、ガラクトースからは5.1倍のエタノールを生産した。
本研究においては、熱耐性酵母を作出する際に遺伝子操作を行わなかったことも大きな特徴だ。段階的に培養温度を上昇させながら酵母を世代交代させていき、人為的な遺伝子の組み替えでなく酵母自らの適応進化で熱耐性を獲得させた。酵母の適応進化にはおよそ2年を要したという。また、判明した熱耐性因子を人為的に組み込んだ酵母についても同様に耐性が再現できた。
【垣内勇哉】