【9・10月号特集】芸術の秋 京都 学生主体のイベント めじろ押し
「学生の街」ともいわれる京都で大学生主体のイベントが数多く催される。「芸術の秋」に向けて進むさまざまな取り組みを取材した。【田中穂乃香】
京都7大学合同展覧会 個性豊かな作品並ぶ

京都学生美術部連盟は8月28日〜9月1日、堀川御池ギャラリー(京都市中京区)で「京都7大学合同展覧会2019」を開いた。5日間で262人が訪れた。
画材や作品形態、手法、出品数は自由。会場には、色鉛筆画や水彩画、油絵、専用のソフトを使用したデジタル作品、石を使用した彫刻作品など、140点が並んだ。一つ一つに出品者名や画材、作品に込めた思いを記したキャプションが添えられた。出品者が制作過程や工夫点、制作期間などをまとめた冊子「メイキング」もあり、作品の背景を知ることができるのも魅力の一つだ。
展覧会の目玉は、京都大、京都産業大、京都女子大、同志社大、佛教大、立命館大、龍谷大の美術部員有志らが制作した合同作品だ。各自が年代・年号を聞いてイメージした絵をポストカード大の紙に描き、絵を並べて年表形式にした。先史時代をイメージした絵は日本神話に登場する怪物ヤマタノオロチの想像画、平安時代は和泉式部の横顔、大正時代は女性の袴姿のイラストなど、それぞれの個性が光った。
京都学生美術部連盟の議長を務める木下航太朗さん(京産大・3年)は「展覧会を通して他大学の作品やメイキングに触れることができる。出品者らにとって今後の制作活動の参考になれば」と話す。
活動通して 他大と交流
京都学生美術部連盟には京大、京産大、京女大、同志社大、佛教大、立命大、龍谷大の美術部員約130人が所属する。京都の学生の芸術・創作活動の活性化を目指し、年1回合同展や交流会を開く。
1981年に同連盟の前身、全京都学生美術部連絡会議が発足し、2012年に現在の組織になった。
木下さんは「7大学で情報や価値観を共有して連携を取るのは難しく、意見が衝突することもある」と大きな団体を運営する難しさを振り返り「他大学の学生と一緒に練習をする中で、これまで知らなかった新たな表現技法を学ぶことができている。良い刺激を得ている」と活動の醍醐味(だいごみ)を語った。
京都学生美術部連盟は、京都市勧業館みやこめっせ(京都市左京区)で10月26、27日に開催される「2019 京都アートめっせ」にも出品予定。
着物を「身近」に 着京祭 初の企画も

京都大の学生団体「京都着物企画」は9月29日、平安神宮応天門(京都市左京区)前の特設ステージで「第一回 着京祭(ききょうさい)〜キョウノキモノ〜」を開く。着京祭では着物ファッションショーに加え、着物の着付け講座を同時開催する予定で入場は無料だ。
着京祭は来場者に着物などの伝統文化を身近に感じてもらうために開かれるイベント。着物ファッションショーはこれまでも行ってきたが、イベント後に来場者の着物への関心が薄れることが課題だった。今回は着付け講座を同時開催し、着物をより身近に感じてもらうことを目指す。
着京祭に向け、7月に「夏の浴衣着付け塾」が行われた。参加者は浴衣の着付けの指導を受けた後、貴船神社の「七夕笹飾りライトアップ」を散策した。その他、着京祭のプレイベントとして優勝者に浴衣をプレゼントするフォトコンテスト企画や京都着物企画の公式ツイッターのアカウントをフォローし、リツイートすることで和小物をプレゼントする企画などを用意しているという。
京都着物企画は若者に日本の伝統文化の魅力を発信するイベントの企画・運営を行う団体。京大の1、2年52人が所属している。2001年に「現代きもの企画」として発足し、03年に「京都着物企画」に名称を変更。これまで着物ショップや和カフェ、伝統文化体験イベントの運営を行ってきた。現在は夏に浴衣、秋に着物の着付け塾を開催し、使っていない着物や浴衣を若者に受け継ぐKistory事業(Kimono×History)、和と現代の融合をテーマにしたギャラリー「一歩屋」、着物ファッションショーの企画・運営、京大の11月祭で販売する京大着物図鑑の制作などに取り組んでいる。
同年代から 伝える魅力
京都着物企画が目指すのは、若者に自らの目線で着物をはじめとする伝統文化を伝えることだ。伝統文化の普及のためにまず自らが伝統文化を知り、魅力を再発見する取り組みを重視している。浴衣を着て授業を受けるメンバーもいるといい、イベント運営に興味があって加入したメンバーも活動を通して着物への関心を高めている。
メンバーの一人、櫻井勇斗さん(2年)は「一からイベントを作り上げていく体験ができるのは学生団体として大きな魅力だと思う。着物といえば成人式や卒業式に着るというイメージが強いが、(活動を通して)日常から着物を着こなす京都の文化も深く学べた」と話す。
新たな時代 伝統と革新 京都学生祭典

第17回京都学生祭典本祭が10月13日、平安神宮前・岡崎プロムナード(京都市左京区)一帯で行われる。学生の音楽コンテストや踊りの披露、食のブースや子ども向けのコーナーを設け、京都の魅力を発信する。来場者数は毎年のべ10万人以上。2003年から毎年続く学生主体のイベントだ。
令和最初の京都学生祭典のコンセプトは「京都から挑み、ともに新時代へ。」。17年目を迎え、各企画の内容が固定化する中、今後も祭典を続けていく方法を模索した。産学公・地域との連携をさらに深め、新時代にふさわしい取り組みが必要だという思いが込められている。
今年は京都の29大学約270人の実行委員が企画の立案や運営に携わる。外国人観光客にも楽しんでもらえるよう多言語対応のパンフレットやマップを用意し実行委員と留学生が案内をするほか、障害のある人やお年寄り、運動が苦手な人も楽しめる「ゆるスポーツ」のコーナーを会場に設け、誰でも楽しめるよう工夫する。また京都の着物文化に着目し、着物をリメイクした服のファッションショーも企画している。
第1回から開催している学生音楽コンテスト「Kyoto Student Music Award(KSMA)」、第3回に誕生したオリジナル創作踊り「京炎 そでふれ!」、オープニングで担がれ、第5回から続く「京炎みこし」など、これまでの伝統も大切に受け継ぐ。
実行委員長の山田聡司さん(京都産業大・3年)は、3年後の京都学生祭典20周年を見据え、伝統を残していくのか変革するのか悩んだという。準備を始めた昨年11月から模索を続ける中で、京都ならではの文化・歴史面に着目した新しいプロジェクトに挑戦しつつ、開始当初の目的「学生が京都の魅力を発信し、京都や日本、そして世界を盛り上げる」を意識し、これまでの伝統の継承にも力を入れた。
山田さんは「京都学生祭典を葵祭、祇園祭、時代祭といった京都三大祭りと並ぶ『京都四大祭り』の一つにしたい。京都中に祭典を根付かせ、京都で学生時代を過ごした人のよりどころになれば」と思いを語る。
地域交流大切に
京都学生祭典実行委員会は本祭だけでなく日頃から地域との交流を重視した活動を続けている。
毎年7月から9月にかけて地域の夏祭りに参加し、子ども向けブースを出展したり「京炎 そでふれ!」を披露したりしている。05年からは小中学校の運動会などで「京炎 そでふれ!」を踊ってもらえるよう、出前教室を開いている。
山田さんは「京都の一員として地域社会とのつながりを大切にし、京都の魅力を発信していきたい」と話した。
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