【7月号】DNA損傷修復 メカニズム解明
神戸大バイオシグナル総合研究センターの菅澤薫教授、大阪大基礎工学研究科の岩井成憲教授らの研究グループは、スイスのフリードリッヒ・ミーシャー生物医学研究所などとの共同研究で、紫外線が原因で生じたDNAの損傷をUV—DDBが効率良く検出して、修復を開始する仕組みを分子レベルで解明したと発表した。成果は、5月29日に英科学誌「ネイチャー」に掲載された。
UV—DDBは、紫外線が発生させたDNA損傷を見つけ出して損傷と結合し、修復を開始することで皮膚がんの抑制に役立つタンパク質複合体だ。染色体を構成する基本単位のヌクレオソームで、UV—DDBが結合しにくい内側の損傷をどのように検出し修復しているかはこれまで分かっていなかった。
今回の研究では、損傷がヌクレオソームの内側に隠れている場合の修復メカニズムを新たに解明。UV—DDBがヌクレオソームの構造を変化させ、DNA二重らせんがヌクレオソーム上で数塩基分移動することで、損傷を外側に露出させて結合・修復を開始していることが分かった。
研究グループは、今後、実際にDNA損傷の修復反応を開始するために必要な一連のプロセスが明らかになり、人為的な制御が可能になれば、紫外線に対する防護や皮膚がんの予防につながる医薬品の開発への応用が期待されるとしている。【大林嵩幸】
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