制作に携わったメンバーら(提供=大阪府立大)
制作に携わったメンバーら(提供=大阪府立大)

 文化庁は5月14日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)が「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」について、世界文化遺産への登録が適当と勧告したと発表した。大阪府、堺市、羽曳野市、藤井寺市が登録を目指していた。

 堺市と羽曳野市にキャンパスがある大阪府立大は地域と連携し世界遺産登録に向けた活動・事業を進めてきた。4月からは同大生が堺市のエッチング工房Shine—輝—と制作した「ペアー木ーホルダー『KOFUN  KOFUN』」の販売が始まった。

 「ペアー木ーホルダー『KOFUN  KOFUN』」の開発は、堺商工会議所が地元の小規模事業者などと共に実施する「堺の新たなお土産品」開発事業の一環だ。学生らはキーホルダーと商品パッケージのデザイン、商品名の考案に携わった。

 同商品のコンセプトは「恋が叶うペアキーホルダー」。若者や今後増える外国人観光客に、古墳に興味を持ってもらおうと工夫を凝らした。キーホルダーには堺市の友好都市、東吉野村の吉野杉を使っていて、二つを合わせると古墳の形になる。表面には「恋愛」「幸福」「運命」「真実」「希望」といった漢字の熟語、裏面には堺市の花木のツツジや市の鳥モズが彫刻されている。

 制作が本格的に始まったのは2018年10月。学生4人がそれぞれデザイン案を持ち寄り、話し合いを重ねて一つの案にまとめていった。耐久性や大きさ、価格設定などについて工房側からアドバイスを得ながら完成させた。

 制作に携わった政田ありささん(同大・3年)は「キーホルダーは世界遺産登録を応援しようという気持ちを込めて作った。(世界遺産登録が勧告されたことを知り)キーホルダーを手に取ってもらう機会が増えれば」と話した。

 「ペアー木ーホルダー『KOFUN  KOFUN』」は仁徳天皇陵古墳(大山(だいせん)古墳)近くの土産物店もず庵と堺伝統産業会館で販売されている。税込み1728円。

大学統合後も 魅力を発信へ

 大阪府大はさまざまな形で百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録を後押ししてきた。環境部エコロ助の学生らが仁徳天皇陵古墳(大山古墳)の隣にある大仙公園で清掃活動をしたり、中百舌鳥キャンパス内や周辺の古墳群を巡るマップ「府大ウチソト」を制作し公開講座などで配布したりしている。

 17年の「府大ウチソト」の制作には、同大の学生(当時)3人が参加。地域と大阪府大をどうつなぐかをテーマに、約半年の期間をかけて作られた。大学周辺にある仁徳天皇陵古墳(大山古墳)やいたすけ古墳、百舌鳥八幡宮などの史跡を写真付きで紹介するほか、現在の大仙公園周辺に大阪府大旧農学部の前身、大阪府立農学校や大学統合前の大阪女子大があったことを解説する。

 大阪府大は4月、大阪市立大と運営法人を統合し、現在は「公立大学法人大阪」として「1法人2大学」の体制を取る。22年4月には両大学が統合され「1法人1大学」となり、キャンパス再編が行われる予定だ。大阪府大国際・地域連携課の仲田くるみさんは「大学統合後も公開講座などを通してさまざまな角度から古墳にアプローチしたい」と話す。【田中穂乃香】