ニホンザルの皮膚の培養細胞からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製することに世界で初めて成功したと、京都大霊長類研究所の今村公紀助教らの研究グループが発表した。

 作ったiPS細胞が神経細胞(ニューロン)に分化することも確認した。成果は8月15日、英科学誌サイエンティフィック・リポーツの電子版に掲載された。

 研究グループによると、ニホンザルは日本の固有種で、世界最北端に生息するサル。ニホンザルの研究は、脳神経科学の分野で進んでいたが、発生生物学の分野や遺伝子改変実験は遅れていた。

 今回の結果は、遺伝子や細胞の面からニホンザルの特性を研究するための手がかりになる。またニホンザルのiPS細胞は半永久的に保存できることから、絶滅の危機にある霊長類をiPS細胞の形で保存するなどの応用も期待される。

 研究グループは、「iPS細胞の可能性は、医療分野だけにとどまらない。ニホンザルのiPS細胞を活用することで、霊長類学やヒト進化生物学といったiPS細胞の別の可能性を提示していきたい」とコメントした。【田中穂乃香】