【10月号掲載】特集 今どき就活の実態
就職活動は今、大きな転換期を迎えている。経団連が就活ルールの廃止に言及し、ルールの必要性やスケジュールに対するさまざまな意見が飛び交った。現行のルールが形骸化する中、今の就活はどのような状況にあるのか。キャリアコンサルタントや就活を終えた学生に取材した。【堀江由香・元川紬】
■学生に戸惑い
経団連の中西宏明会長が9月3日、就活のスケジュールや方針を定めた「就活ルール」の廃止に言及し、2021年春入社の学生から廃止する意向を示した。企業や大学の間で大きな波紋を呼び、就活の早期化・長期化を懸念する声が浮上。政府はこれを受け、21年春入社の学生には現行のルールを維持する方針を固めた。今後は経団連のルールを廃止し、政府と大学、経済界が作ったルールで企業に要請する考えだ。
経団連はこれまでに、説明会や面接の解禁日こそ変更を繰り返してきたが、ルール自体の廃止を表明したのは今回が初めて。中西会長は世界的な人材獲得競争を背景に、新卒の学生を一括採用し、一つの企業でキャリアを積んでいく日本の雇用慣行を見直す必要性に触れた。
学生の戸惑いもうかがえた。UNN関西学生報道連盟では9月15~27日、学生を対象にアンケートを実施し36件の回答を得た。「現状のスケジュールをどう思いますか」の問いでは「変えるべき」が13人、「今のままで良い」が14人、「わからない」が9人と分かれる結果に。「就活ルール自体は廃止されるべきだと思いますか」の問いでも約半数が「わからない」と答えた。現行のルールが既に形骸化していることから、学生にとって何が一番理想なのか、判断しにくい様子が見て取れた。
■的を絞りにくい就活

日本初のキャリアコンサルタントとして活躍する上田晶美さんは、東京都渋谷区に事務所を構え、悩める就活生の相談に応じている。現在、読売新聞と日本経済新聞に就活コラムを寄稿。全国の大学で講演を開いたり、動画投稿サイト「ユーチューブ」で面接のアドバイスを発信したりするなど、多方面から就活生をサポートしている。
インターネットが急速に普及した1995年以降、就活でも「オープンエントリー方式」が広く採用されるようになった。上田さんによると、それまではがきと電話で企業にアポイントを取っていたものが、インターネットで誰でも気軽に応募できるようになり、就活生にとってチャンスは増えたが、志望業界を絞りにくい事態を招いたという。「はがきと電話では10社程度が限界だったが、今は1人が何十社とエントリーする。 いくつもの業界の大手ばかりを受ける就活生もいるが、 本来は2〜3業界に絞って、同業界を縦に受けるべき」と意見を述べた。
就活ルールについて、上田さんは「今のスケジュールが妥当」との立場。その上で「ルールは大学側と経団連が話し合って決めるもの。大学側がもっと意見を言わないといけない」と訴えた。
日本の就活システムについて、新卒一括採用には賛成だが、いまだ「終身雇用が良い」とする意見が残る点には疑問を抱く。「今は転職が普通になりつつある時代。『新卒で入った会社でずっと働かなければ』とプレッシャーに感じる必要はない」と話した。
■「建前だけは必要」
南圭紀さん(大阪大・4年)は、3年生になると同時に就活を始めた。会社説明会に足を運んだり、自分年表を作ったりするなど積極的に行動。視野を広げるには効果的だと考え、1日間のインターンシップに複数参加した。「とにかく形から入った」と自身の就活を振り返る。
もともと車が好きだったことから、自動車メーカーA社の冬季インターンシップに応募し、2回の面接を経て参加した。予算管理など、実際に社員の仕事を手伝う5日間のプログラム。南さんは参加した時点で、このインターンシップが採用直結型であることを確信したという。
志望業界が定まったのは、エントリーが始まった4年生の3月だった。内定が期待できるA社を第3志望に据え、同業界の大手に挑戦。エントリーした14社のうちA社を含む3社に内定し、A社への就職を決めた。「就活は強気と弱気の繰り返し。他社からの連絡を待つ間、早くに内定を出してくれたA社を待たせることになったのが就活で一番辛かった」と苦労を語った。
就活ルールについては「守っている企業が少なく形骸化してはいるが、完全になくしてしまうのは反対。今よりも就活を始める時期に差が出ると混乱も起きかねないので、建前だけは必要」と主張した。
■関大就活イベント 東京で開催
首都圏での就活をテーマに、3年生と卒業生の座談会イベント「東京知ル活」が9月8日に関西大東京センターで行われた。 人財採用戦略コンサルタントの池田斉正氏によるワークを交えた講演も開催。関大生52人が参加し、首都圏で働く関大の卒業生23人と交流した。
17年から4年生向けに開いていたが「もっと早く聞きたかった」という声を受け3年生向けに一新。首都圏の学生に比べ、地方の学生の準備不足が顕著なことを受け、東京での開催に至った。
メインは日本最強クラスを自負する座談会。随時質問を受け付け、卒業生は多様な視点から学生の疑問に助言した。中には際どい質問もあり、就活本に載っていないような情報を提供。学生は卒業生と少人数で交流し、縦のつながりを強めた。イベント終了時刻を過ぎても交流は続き、大きな盛り上がりを見せた。参加した宇田佑香さん(文・3年)は、「漠然と志望業界を考えていたが、実際に働く先輩と話をして、本当に興味があると確信した」と話した。
講演では、池田氏が業界研究や自己分析の進め方を徹底的に解説。イベント終了後も質問をメールで受け付けるなど、手厚い支援体制を敷いた。
東京センターの山本直子さんは「学歴を気にせず何事も挑戦してほしい」と激励する。反響が大きければ来年も開催予定だ。
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