【10月号掲載】適切な遺物保存目指して 京大 模擬古墳で実験
古墳に眠る遺物の適切な保存に向け、京都大工学研究科の小椋大輔教授らが研究を行っている。同大桂キャンパスに、古墳内石室を模した空間(模擬古墳)を設置。模擬古墳内に入れた金属を長期にわたって観察し、腐食状況などから劣化の要因やメカニズムを探る。
きっかけは1972年に高松塚古墳(奈良県明日香村)で極彩色壁画が見つかったものの、発見後に劣化が進んだことだった。壁画は石室を壊して別の場所に移すことに。石室解体に携わった小椋教授は、劣化により遺物の貴重な情報が失われることを懸念し、研究に着手したという。
模擬古墳内に鉄や青銅をつるし、専用の装置で腐食速度を計測している。地盤温度、酸素と二酸化炭素の濃度など劣化要因になり得る内外環境も細かく計測。年に1回石室を開けるが、普段は石室に設けた窓から定期的に目視観察している。
これまでの調査の結果、温度が夏は天井、冬は床で高くなることが分かった。また、温度が高いほど土中微生物の活動量は増加。酸素濃度が夏に低下、冬に上昇し二酸化炭素濃度はこれと逆の相関を持つことなども確認されている。今後はそれぞれの内外環境について予測モデルを作成する方針。
金属以外の遺物の研究成果を得るため、いずれは布製品や木製品、有機物や人骨などでも実験を行うとしている。小椋教授は「いち早く遺物劣化の進行を抑える方法を確立させる必要がある。2種類以上の遺物を同時に入れて検証するなど、発展的に見ていきたい」と話した。【堀江由香】

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