病院に適した音楽を 京都精華大教授がCD制作
ピアニストとしても活躍する京都精華大の小松正史教授(サウンドスケープ論)が、病院という空間のための環境音楽を収録したCD「いのちのそばに~医療空間のための環境音楽~」を制作した。楽曲には患者が抱える不安や、医師や看護師の緊張感を和らげたいという思いが込められている。
小松教授はこれまでに京都丹後鉄道や京都タワーなどの公共空間に向けた、周囲の環境の一部となることを基調に作られる環境音楽を提供してきた。今回の取り組みは、芸術作品によって病院を快適な空間にするホスピタルアートに取り組む耳原総合病院(大阪府堺市)から依頼を受けたことがきっかけだ。
依頼を受けてから、実際に病院へ訪問し院内の隅々まで視察。また、院内で働く医師や看護師の意見を考慮しながら、昨年10月に曲を完成させた。人の話し声など、意識的に人が聞こうとする音である前景音によるストレスを緩和するため、ピアノのメロディーを主体にし、明るい曲の中にも少し暗い旋律を入れた。「不安など暗い気持ちを抱える人には暗い曲で寄り添う方が良い」と話す。
制作された曲は耳原総合病院内で流されている。病院で働く医師やスタッフからは「エレベーターの待ち時間にいらつきを感じなくなった」「患者さんに向けて病状を告げる際の心のダメージを和らげる効果がある」などの声が寄せられた。
小松教授は環境音楽の制作の他に、聴覚や身体感覚を耳のトレーニングによって研ぎ澄ませる独自の「音育(おといく)」に取り組む。普段意識して聴かない音に耳を澄ませることで脳が活性化し、日々を生き生きと過ごせると考え、「今後も音による心のデザインを進め、実践していきたい」と語った。
CDは全22曲収録の2枚組みで3240円(税込み)。耳原総合病院内の売店でも販売されており、ウェブサイト(http://nekomatsu.shopselect.net)からも購入できる。
【上田真友子】

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