【7月号掲載】時代の鏡 学生寮(4)吉田寮を追う写真家 野村幹太さん(37)
築100年を超える京都大吉田寮で生活する学生を2013年から撮影してきた。これまでに撮った寮生は50人ほど。
寮には世間の価値観にとらわれず、自分の個性を大事に生きている人も。ビリヤードやマージャンに一日中打ち込む人や、服装や髪形に無頓着な人。「彼らの外見や行動を見ると、流行のファッションで着飾って街中に繰り出す現代の多くの学生とは違う気がした。自分が生まれる前の映画や本でしか知ることのできない世界に、彼らは生きているのかもしれない」。思わずカメラのシャッターを切っていたという。
同志社大を卒業し、一般企業に就職。その後、趣味の写真撮影の技術を磨くため写真の専門学校に通い、南米で撮影を重ねた。帰国後、学生時代から気になっていた寮を訪問。入ると、木造特有の湿気と香りに包まれた。「アマゾン川と同じにおいだ」。寮に親近感が生まれ、撮影するようになった。
ただ寮はあくまでも個人の生活空間。自治会に撮影は許可されたが、非公開が条件だった。展示できるか分からないまま、月に1度、寮に約1週間滞在して撮影してきた。
だが次第に寮生との距離も縮まり、今年の4〜5月に寮の中庭や廊下で写真展を開くことに成功。反響が大きく、期間中何度も足を運んでくれる人もいたという。
1913年に建設された吉田寮現棟は耐震性に欠くとして、大学は寮自治会に入寮募集の停止を要請している。寮への思いを聞くと、「(吉田寮は)自治の歴史と人々の生活が詰まっている。また、学生が集まって好きなことをする場所でもある。ずっと残ってほしい」と話した。
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