【3・4月号掲載】近大原子炉 4月再開
近畿大は研究用の原子炉(大阪府東大阪市)が、原子力規制庁の検査を合格し、4月中旬にも運転を再開すると発表した。大学の研究炉の再稼働は、東京電力福島第1原発事故後の規制厳格化以降、国内初。京都大も原子炉2基の2017年度中の運転再開を目指す。両大学側は再稼働で、原子炉を使った研究の進展や学生実習の再開が期待できるとしている。
国内の大学にある教育・研究用原子炉は京大の2基と近大の1基のみで、新規制基準への対応のため全て停止中。
近大は新基準合格のために設備を増強。3月17日に規制庁から使用前検査と施設定期検査の合格証が交付された。
京大は5月上旬から中旬にかけて臨界集合体実験装置 を、今夏にも研究用原子炉(KUR)をそれぞれ再稼働すべく調整中。
研究用原子炉の規制基準は福島第1原発の事故を受けて厳格化。京大の原子炉は16日現在も新規制基準に対応する工事の最中だ。
一般に、教育・研究用の原子炉は発電用の原子炉と異なり、原子力の基礎的な研究や中性子の発生装置としての利用が目的。
停止前は京大・近大共に、原子炉を使う学内外の研究を受け付けていた。近大では全国の共同利用施設として物理や化学などの研究が行われていたが、現在は全て取りやめている。
他にも京大のKURでは、ホウ素中性子捕捉療法と呼ばれる、中性子を利用したがん治療の研究も進められていた。年間80例ほどの症例があり、再稼働できれば研究だけでなく治療も進むことになる。
発電用と比べると低出力の炉は学生実習にも適する。近大原子力研究所の若林源一郎准教授は「近大の原子炉は冷却する必要がなく、運転中でも原子炉内は常温で気圧も大気と変わらない。安全性が高く、学生自ら原子炉を運転できる」。
京大原子炉実験所副所長の高橋千太郎教授は再稼働に向け「『見学した』と『自分で動かした』は違う。できるだけ早く再開して、動いているものに触らせてあげたい」と話した。
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