イスラエル北部、ガラリヤ地方のテル・レヘシュ遺跡で、天理大文学部の桑原久男教授が団長を務める調査団が、1世紀前半のものと見られるシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)跡を発見した。シナゴーグとしては最初期のもので、イスラエル国内ではこれまで7例しか確認されていない。昨年12月8日に発表され、17日には同大で調査結果に関するシンポジウムが開かれた。
 発見された遺構は、中央に石の台が置かれ、自然石で組んだ壁に沿いベンチとして用いられたと見られる切石が並ぶなど、これまでに発見された初期シナゴーグに共通する構造を持つ。他の初期シナゴーグでは聖書の内容を記した巻物の断片など宗教的な遺物が発見されているが、今回の調査では発見されていない。共に発見された土器を手がかりに年代を推定した。
 南北8・5㍍、東西5㍍を超えるが、未発掘の部分があり東西方向の最終的な大きさは分かっていない。
 発見されたシナゴーグ跡は、イエス・キリストが暮らしたとされるナザレから東に約10㌔に位置。聖書にはイエスがガラリヤ地方で宣教を行ったとの記述があり、今回発見されたシナゴーグに訪れ、教えを説いた可能性もあるという。
 桑原教授は「今回の発見は全く予想していなかった」と驚きを口にする。本来は鉄器時代後期の遺構の調査を目的とした発掘だった。シナゴーグ跡を発見したことから急きょ調査対象を切り替えた。
 テル・レヘシュ遺跡での発掘調査は2006年に始まり、今年で10期目。来年度以降も調査を続ける予定で、桑原教授は今後について「今回見つからなかった、(他の初期シナゴーグ跡では見られる)宗教的遺物の発見を目指したい」と語る。
 調査結果は、今年の3月25日、26日に池袋サンシャインシティ文化会館(豊島区)で開催される「西アジア考古学会」の発掘調査報告会でも発表される予定。