【1月号掲載】阪大 ゲノム編集センター 設立
大阪大は昨年12月14日、「ゲノム編集」技術を用いた研究の活性化を目指す拠点「ゲノム編集センター」を設立した。ゲノム編集とは、生物の遺伝情報を人工的に改変する技術。常設のゲノム編集拠点は、国内初となる。
■研究促進 2部門軸に
昨年1月、現在センター長を務める医学系研究科付属共同研究実習センター(共同研)の河原行郎教授の発案がきっかけ。2012年に報告されたゲノム編集ツール「CRISPR/Cas9システム」の普及に伴いゲノム編集に関連する分野は著しい発展を見せ、今後の医療の発展には不可欠な技術と考えた。世界のゲノム編集分野をリードする研究拠点となることを目指す。
迅速な立ち上げを重視し、阪大の独立した組織ではなく医学系研究科付属の組織とすることで、比較的短期間で設立に至った。現在は10人以上の研究者が所属する。共同研の6階を中心に、ゲノム編集が成功しているかの解析などを行う「受託解析サービス部門」と、マウスなどの実験動物にゲノム編集を行いモデル動物を作製する「モデル動物開発部門」の2部門を軸に運営。共に他大学や企業からの依頼も受け付けている。民間企業では難しい、大きな遺伝子の挿入など高い技術が必要な操作も可能だという。
空きスペースの不足により予定していた業務の全ては始められていないが、今後の場所の確保に伴って順次開始していく。ゲノム編集を行った細胞や動物を保管し研究者がいつでも使えるようにする「バンク化」も予定され、若手研究者の教育や、効率的なゲノム編集技術の開発も同時に行う。
当面はゲノム編集センター内で研究を行うのではなく、各研究機関の支援に重点を置いた運営をするものの、将来的にセンターの規模が大きくなれば独自の研究を開始する考えもあるという。
■医療応用 見据え
海外ではすでに医療応用に向けさまざまな面でゲノム編集を用いた研究がなされ、エイズの治療など成果を上げているものもある。日本は研究競争に出遅れているとの声もあり、河原センター長は「組織を作るだけでも意味はあるのでは」と話す。
病気の治療など具体的な研究は医学系研究科の各研究室に任せるとしつつも、同センターにおいても、運営を通して得た研究結果を基にしたヒト患者への医療応用も視野に入れているという。
河原センター長は「医療応用に向けノウハウを蓄積し、患者に直接届けられるセンターになれば」と期待を込めた。
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