【6・7月号掲載】【特集】就活で有利に働くのか 大学生の資格事情①
近年、資格に関する宣伝広告や書籍が数多く見られる。履歴書では名前、学歴などと並び資格の記入欄が設けられている。いまや個人のステータスを示す一つの要素となっている資格は、就職活動に臨む学生に限らず多くの学生の関心の的だ。各大学では資格講座の開講といった取得支援も展開。一方で、学生の間では「資格を持っていないと就職活動が不利になるのか」、「どんな資格がどこで役立つのか」という疑問の声も挙がる。企業の資格に対する考え方、大学が行っている資格支援の取り組みについて、学生の意識と共に調査した。
・資格の取得率 6割超
UNN関西学生報道連盟では、大学生を対象にウェブと紙媒体で資格の取得状況に関する調査を行った。
アンケートに回答した139人のうち、「資格を取得している」と答えた人は85人(61・2%)で、「資格を取得していない」と答えた人が54人(38・8%)となった。
「取得している資格」では「実用英語技能検定(英検)」と答えた人が42人と最も多く、次いで「日本漢字能力検定(漢検)」と「TOEIC」が15人、「簿記検定」が8人という結果に。その他に「秘書検定」や「マイクロソフトオフィス スペシャリスト(MOS)」を取得している学生、「TOEFL」などのスコアを獲得している学生もいた。
「取得した理由」を聞くと英検、漢検は「高校入試で有利になると聞いたから」、「高校で取得するのが必須だった」という答えがほとんどで、中学生や高校生の時に取得するケースが多いようだ。他の資格については「就活で有利になるから」、「単位認定のため」、「実力を試したかったから」と目的意識を持っている学生が多い。一方、「興味本位で」という理由も。
「取得の際に苦労したこと」を聞いたところ「独学だったために手探りの状態で勉強した」、「学校の勉強やバイトとの兼ね合い」といった声が大多数を占めた。結果的には資格を取得することができたものの、多くの学生が、学習方法や学習時間の確保に頭を悩ませている実態が浮き彫りになった。
・資格の重要性 就活生も実感
資格取得を目指す学生からは「就活を有利に進めるために資格を取りたい」という声が聞かれた。英語力を就活の武器にしたいと考えている女子学生(同志社大・2年)は「面接時にアピールできるよう、TOEICの得点を伸ばしていきたい」と話した。
また、結婚や出産後の仕事復帰を見据え、資格取得に励む学生もいる。社会福祉士資格の取得を目指す福田麻美子さん(同志社大・2年)は「仕事を一度辞めたとしても、資格を生かすことで専門分野での復帰を目指したい」と語った。
一方で、資格取得を断念し就活に臨む学生もいた。製薬会社から内定をもらっている男子学生(神戸大・4年)は「3年の時に簿記検定の取得を目指したが、難しくて諦めてしまった。自分はすでに内定をもらってはいるが、就活において資格は大きな役割を果たすと思う」と資格の重要性を強調した。特に、志望の職種に合った資格の取得が、就活においては効果的だという。
・取得に消極的な声も
資格を全く持たない学生に話を聞くと「金銭面で余裕がない」や「サークルやバイトで忙しく学習時間が取れない」などの理由が挙げられた。中には今後も資格を取得する予定がない学生もいる。
資格に興味を示さない学生(同志社大・2年)は「取得しても本当に就活に役立つか分からない」と疑念を抱く。また、「どんな資格が有利になるのか知らないし、大学が何を支援しているのかも分からない」(関西大・2年)と行動に移せずにいる学生もいるようだ。
・企業は人柄を重要視
就活で資格はアピール材料になるのか。企業の声を探った。
グローバル化が進む中、 英語はビジネスの必須道具となりつつある。重工業メーカーの人事部門で働く男性は、国内勤務だが、海外事務所と労務管理について電話でやりとりする際は英語を用いるのが一般的だという。「採用時は話せなくてもいいが、入社後の成長を見積もる意味でTOEICのスコアは採用の判断材料になる」と話す。
他の資格はどうか。経理やITなどの専門職では、資格取得者を即戦力として採用する例が多い。一方総合職について、就職情報を提供するマイナビの担当者は「資格を取った事実よりも(取得までの)経緯や目的意識を面接で話せるほうが大事。あくまで人柄重視」と強調する。
では、どんな人柄が重視されるのか。ヘルスケアや農業などで事業展開するベンチャー企業ファインシードの頼定誠社長は、稼げれば何でもいいという知人の多くが早期離職したのを目の当たりにした経験から、将来を見通し、自分の職業に対して誠実に向き合う人材を求めている。さらに「先輩からスキルを盗むためにも、素直さは大切」と話す。資格では測れない要素にも企業は注目している。
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