4年間通った思い入れのある学び舎全体を発表の場として、学生が卒業制作作品を展示する「2015年度 京都造形芸術大学 卒業展/大学院 修了展」が、京都造形芸術大で2月27日から3月6日まで開かれた。卒業制作作品・研究論文を展示・上映するほか、学生らがカフェを企画したり、ミュージアムショップで作品を販売したりと、様々な試みが行われた。
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遠藤真由香さん(こども芸術学科・4年)は作品『雨』を制作した。
作品では、雨が振る様子を表現した細い紙がいくつも釣り下げられ、地面にも水たまりの模様を表現した紙が配置されている。紙には繊細な切り絵細工が施され、一つだけ釣り下げられているビニール傘にも切り絵が貼られている。構想のきっかけは、児童館実習中に子どもたちが切り絵をしていたところを見たことだ。そこに元々好きだった「雨」という題材が組み合わさり、この形になったという。
「人生は道で表されることが多いが、そこに流れている時間を雨のように感じた。時間の雨で流しきれなかった嫌な思い出から、自分を救いたいと思い作品に傘をつけた」と遠藤さんは振り返る。だが、制作後には思いが変わった。「いろんな人の言葉や行動が、傘となって自分を助けてくれたのだと実感するようになった」と話す。

『雨』(インスタレーション)
『雨』(インスタレーション)

大山文子さん(情報デザイン学科・4年)の作品は『PAVE』というすごろくゲームだ。「元々すごろくが好きだったけど、大人にとってはすごく単調。もっと頭を使いつつ、でもルールはシンプルなすごろくを考えた」と話す。
従来のすごろくとは違い、『PAVE』は自分でゴールまでの道のりを自由に決めることができる。また、「絶対に真ん中を一度は通らないといけない」というルールを作り、コマが入り乱れるようにしたり、他人を妨害する手段を作ったりと、すごろくでありつつ、従来のすごろくにはなかった戦略的要素が付け加えられている。
インテリアとしての機能や手触りも考え、素材には木を選んだ。「まだまだ改良の余地はある」と話すが、商品化希望の声もかけられたという。

『PAVE』(立体)
『PAVE』(立体)

壁面いっぱいの青の色彩が来場者の目を捉える。よく見ると、その青は小さなたくさんの絵から成っており、それぞれ絵柄は異なっている。森下茅さん(芸術表現専攻ペインティング領域・修士課程2年)の作品『現実と想像のあいだ』だ。
森下さんは、作品を制作することで「私と他者」の関係を探っている。「自分の心情を描いたもの、他者に影響を受けたもの、様々な作品を好きなように並べてみて、結びつきを探るのが面白い」。Instagramなどに上がっている他人の画像から発想を得て、制作することもあるという。
作品は1枚1枚、直接紙に油絵具を塗り付けて制作している。1枚単位で販売もしており、売られて空いたスペースには新たに作った作品を埋め込むという。「そうすることで、自分が今何に関心があるのか見ることができる。作品全体がどういうふうに移り変わっていくか、再発見もできる」と話した。

『現実と想像のあいだ』(油彩)
『現実と想像のあいだ』(油彩)

FOCUS vol.294