vol.288 ワクワクする自動車づくりを
「公道を走るレーシングカー」をコンセプトに販売され、マニアの間で人気が高いスポーツカー「トミーカイラ 」が電気自動車(EV)として復活を遂げた。同車を復活させ、開発・販売を行っているのは、京都大発のベンチャー企業「GLM株式会社(以下、GLM)」だ。
GLMは当時京大大学院生で、現社長の小間裕康氏が2010年4月に立ち上げたEVメーカー。主な事業は「プラットフォーム事業」 と「EV完成車の開発・販売」だ。「プラットフォーム事業」とは、車のボディと下の車台や駆動部分を分け、車台や駆動部分だけをモジュール化したプラットフォームとして販売する事業のこと。顧客は好きなボディを選び、世界に一つしかない自分だけの車を作ることができるようになる。
もう一つの事業「EV完成車の開発・販売」の第一歩として生み出したのがトミーカイラZZ。京都の自動車メーカー「トミタ夢工 場」が製造・販売していた同名のガソリン車の名称・コンセプトを引き継ぎながら、まったく新しくEVとして設計しなおした車両だ。97年に製造を開始した同名車は、運輸省令による保安基準の改正によって約2年で製造を中止。03年にトミタ夢工場が事業を終了したこともあり「幻のスポーツカー」と呼ばれるようになった。同車の存在を知った小間氏は、トミタ夢工場創業者の冨田義一氏と出会い、ブランド利用などの承諾を得る。加えて、冨田氏がGLMに出資したことも、再開発への大きな足掛かりとなった。12年10月に国内初のEVスポーツカーとして認証を受け、14年8月には納車に至った。
GLMがトミーカイラZZの復活にあたってこだわった点は三つ。一つ目は「車とのダイレクト感」。ドライバーが運転していて、車と一体となるような感覚を目指した。二つ目は「加速感」。多くのスポーツカーの重量は1トンから1.2トン。850kgという車体の軽さにより、鋭い加速が可能となった。そして三つ目は「手の内感」。いわゆる「高級スポーツカー」では150キロから200キロまでの速度で楽しむ人が多いが、トミーカイラZZでは日常でもよく使う100キロ未満でも楽しく走ることができる車を目指した。
GLM広報担当者は「今後はトミーカイラZZの販売強化や機種の拡充を行い、プラットフォーム事業を軌道に乗せていけたら」と展望を語る。企業理念の「人々がワクワクする、自分たちもワクワクする自動車づくり」を目指し、GLMはさらにギアを上げ加速を続ける。
【写真】EVとして復活したトミーカイラZZ(提供写真)
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