【特集】大震災 どう備える 阪神・淡路大震災21年③+編集後記
●災害イメージし 自ら備えを
学生に対して「自分で(防災について)考えないといけない部分が大きいのでは」と関西大の林能成(よしなり)准教授(地震防災)は指摘する。特に、下宿をしている学生は、家族との安否確認の方法をしっかり決めておくようにと呼び掛ける。また、地域との関わりが少ない学生は地域住民との「共助」を欠いてしまうため、自ら地震に備えておくことの重要性も増す。「冷蔵庫の中に何も入っていない下宿生もいるのでは。2、3日分の食料はストックしておくといい」と話す。
一方、電車などで大学まで通っている学生は、通学中などの条件下で地震が発生した場合も考える必要があるという。大学にいるときに地震が発生すれば、電車などが止まり帰宅できなくなる可能性もある。林准教授は「無理して動かず、安全になるまで情報を集めるように」と注意する。
「地震が起きるかも、ここで起きたらどうしよう、とたびたび考えることが地震への危機感につながるのではないか」と林准教授。ハザードマップを見て、自分の住む場所ではどのような被害が起こるかをイメージすることも重要だという。また「(今の学生は)ニュースで見た東日本大震災の津波のイメージしかない。津波以外のイメージをどこかで知るといい」とも指摘。過去の地震の展示を行う施設などに足を運ぶといいのではないかと話した。
関大の城下(しろした)英行准教授(防災教育)は「いろいろな人に防災の主体になってほしい」と語る。専門家から市民へ知識や技術を一方的に伝えるだけでなく、専門家と市民が一体となり、災害にどう備えるか、災害が起きたときにどうするかを考える必要があるという。だが、常に防災への意識を高く持つことは難しい。家具の倒壊で下敷きにならないよう配置を工夫する、重いものを高いところに置かないなど「無理せず、簡単にできることを」と城下准教授は話す。また「学生の視点から、楽しい防災を考え、取り組んでほしい」と学生への期待も語った。
・編集後記
今回の取材で、大学は地震災害に向けて耐震や備蓄、安全管理などに取り組んでいることが分かった。だが、学生を含めた全学的な避難訓練の実施や、系統的な安否確認の実現は難しい。学生の避難訓練参加や安否確認メールへの応答は、学生個人に委ねられている部分があり、大学側も課題だと認識している。実際に大地震が発生した際は教職員の間でも混乱が予想されるため、学生の協力は欠かせない。大学と学生が一体となって防災に取り組む必要がありそうだ。
学生にとって、大学内よりも学外にいる時間の方が長い。学外にいる時に地震が発生した場合、状況判断は自ら行うことになる。林准教授の言うように、「いま地震が起こったら」と考えることがとっさの判断につながるだろう。過去の震災の記憶が薄れていく中、いま一度地震への備えを見直すことの重要性が増している。
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