阪神淡路大震災で住まいを失った人々を受け入れるために建てられた災害復興公営住宅群、HAT神戸(神戸市灘区)の一室で、地域交流や高齢者見守りの拠点として「ほっとKOBE」が10月からオープンしている。運営するのは兵庫県立大、神戸学院大、神戸大、神戸市外大などのボランティアの学生らだ。訪れた人には茶や菓子が振る舞われ、皆それぞれに談笑するなど、「ほっとできる場所」になっている。

 発起したのは兵庫県立大防災教育研究センターの馬場美智子准教授。1年半前にHAT神戸に引っ越してから、被災高齢者の繋がりの薄さを問題としてとらえ始めたのだという。HAT神戸では復興住宅ゆえ入居者は途中で転居することが多く、その上高齢化が進み、コミュニティができづらい状況にある。何日も話していない、笑っていない、など孤立する入居者を馬場准教授は目にしていた。「自分の住むコミュニティで何かできることはないか」。そう考え、数年空き店舗となっていたHAT神戸灘の浜10番館の一角を賃貸契約し、学生に開放したのがほっとKOBEの始まりだ。

 さまざまな学生が呼び掛けに集まった。一ノ瀬美希さん(兵庫県立大・2年)もその1人。ニュース番組で、復興住宅での高齢化や孤独死が問題になっていることを知り、「放っておいてはいけない」と、受講していた防災の講義の教授に相談したのがきっかけだ。池田直希さん(神戸学院大・2年)は授業の一つ、ボランティアインターンシップでほっとKOBEを紹介された。最初は単位が認められるまでのつもりだったが、活動するうちにもっと関わりたいと思うようになり、今では卒業後も続けるつもりだ。

 開設当初は、中を覗き込む人はいても、入ってくる人は少なかった。しかし徐々に馴染みの訪問者が増え、今では買い物ついでに立ち寄る人も。地域の高齢者からお母さんや子供まで幅広い世代が集まるようになった。飛び交う話の内容もプロ野球や、国政、科学ニュースとさまざま。子供たちが学生とトランプで遊ぶ姿もよく見られ、その表情は真剣そのものだ。一ノ瀬さんには誕生日に一人暮らしのおじいさんからバラの花をもらうというサプライズもあった。

 池田さんは今後の展望について「もっと初めての人でも入ってこられるようにしたい」と意欲を語る。クリマスマスカードの配布や、ぜんざい、豚汁などの提供もしていくつもりだという。

ほっとKOBE
トランプ勝負をする訪れた子どもと池田さん(左)(撮影=丸岡真人)