京都産業大経営学部松高ゼミは、京都市東山区で全ての人に観光を楽しんでもらうことを目的として活動している。ゼミが発足したのは5年前。観光のバリアフリー化を目指して、観光地という普段と異なる環境において浮かび上がってくるさまざまな問題に向き合う。

 ゼミでは3年生が主軸となり、一つの企画を提案し、実行する。提案する際にまず考えるのは、ターゲットとなる支援対象なのだという。そこからどのように支援すればいいか、実際にどのようなことが問題なのかを追求していく。

今回の支援対象は「食物アレルギーを持つ人」。その実態を詳しく知らない人も多い「アレルギー」だが、一つ間違えれば命に関わる事態に発展する恐れもある。それだけに、実行していくなかでも慎重にならなければならない場面が多かったという。

 京都府で食物アレルギーの研修会や相談による援助をしている NPO 法人「ぴいちゃんねっと」に協力を仰ぎ、地域住民やおもてなし隊に加盟している店舗の従業員などを招いて食物アレルギーについての講座を行った。当日はゲームなどを通して食物アレルギーへの理解を深めたという。また、東山区で営業している飲食店などの食物アレルギー対策を掲載した冊子「にっこり東山」を制作した。各店のアレルギー対策メニューや旅先でのアレルギー体験談、特定原材料(卵、牛乳など特定のもの)除去レシピなどが並ぶ。「扱うテーマが決して明るいものではないからこそ、暗く取り扱うのではなく、明るくポジティブなイメージにしたかった」とゼミに所属する北沢彩さん(京産大・3年)は話す。

 活動の根本的な目的は観光客へおもてなしの心を届けること。次年度は視覚障がいを持つ人の支援を考えているという。北沢さんは「まだ活動範囲が東山だけに限定されている。できればこの活動をモデルケースとして全国に広まってほしい」と語った。