【11月号掲載】人間とアンドロイドが共演
人間とアンドロイドが同じスクリーンで共演する映画『さようなら』が11月21日から公開される。原作は日本の現代演劇界をリードする平田オリザ客員教授(大阪大)の同名アンドロイド演劇。アンドロイドは最先端のロボット研究者、石黒浩教授(同大)が開発した。
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平田教授がアンドロイド演劇を始めたのは2007年。阪大の鷲田清一総長(当時)から何かやりたいことは、と聞かれ「ロボットと演劇がしたい」と答えると、石黒教授を紹介された。
平田教授は阪大に赴任する前から認知心理などの研究を行い、少し無駄な動きがある方が人間らしい、ということをつかんでいた。一方、石黒教授はロボットがどう社会に溶け込んでいくかを問題にしていた。平田教授は二人の出会いを「同じ山にたまたま違う登山口から登って7合目ぐらいで出会った」と表現する。
実際に演劇を始めるにあたっては「アンドロイドが歩けない」ことが問題に。そこで平田教授は死んでいく人にただ詩を読むだけのロボットという設定を考えだした。
今回の映画化は実際に演劇を見た深田晃司監督からの申し出だ。映像を見た平田教授は「すごくきれい、丁寧に作られている」と話した。
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石黒教授が今回の映画に期待していたのは、本物のアンドロイドを用いることで映像に緊張感を持たせること。映画を見て「期待は確信に変わった」という。
『さようなら』がアンドロイド演劇のときから平田教授と協力して映画を製作。人間らしくアンドロイドを動かせるよう石黒教授がアドバイスした。しかし、あまり人間らしくなるとアンドロイドを用いる意味がなくなってしまう。そのため、最後には助言は不要となったという。
アンドロイド演劇は研究にも影響をもたらした。「人はどんなにつまらない機械にでも人間らしさを感じることを確認できた」
映画化によって、本物のアンドロイドをスクリーンに登場させることに成功した。「僕らの研究の目的は世界に貢献すること。映画界に新たな技法を生み出したことは大きな成果」と石黒教授は語った。
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