「Iwataniスペシャル 鳥人間コンテスト2015」(主催=読売テレビ)は、エンジンを用いない自作の機体で飛行距離・飛行時間を競う大会だ。大阪大から参加している「大阪大学飛行機制作研究会 albatross(アルバトロス)」(以下、アルバトロス)は結成以来、一貫して無尾翼機で大空への挑戦を続けてきた。

 大会の中でも無尾翼機で参加する団体はまれだ。そもそも無尾翼機は、機体の安定性が低く操縦が難しい。また、構造上、機体重量が重くなってしまう。それでもアルバトロスは無尾翼機に挑む。「最初無尾翼機を作り始めたのは、(機体が)ある程度目立つよう意識していたからなのでは」と前川さんは推測している。そして、無尾翼機は部の伝統となり、設計・製作について技術が継承され、夢のある研究として取り組み続けている。「無尾翼人力機の安定飛行は世界でもほとんど例がなく、進歩を求めて『挑む』という行為そのものに価値がある」と前川さんは言う。

 機体の設計は大会前後の7月頃から始まる。製作自体は9月頃からスタートし、年末年始にはほぼ完成する。授業で学んだことが製作過程で役に立つかどうか尋ねると「材料力学なんかを授業で扱う部員は得。むしろこっち(アルバトロス)で先に勉強してしまうので、テスト勉強も要らないぐらい」と笑みを浮かべた。

 プロペラ機で長距離飛行を目指す「人力プロペラ機ディスタンス部門」でアルバトロスは、自身の公式記録としては過去最高となる532・02メートルを記録した(昨年度は659・49メートルの記録を打ち立てたが、その後悪天候により他チームが参加できず参考記録になっている)。しかし、当初の目標は1キロメートルだった。部内では目標に届かなかった原因は「テストフライトの時間が取れなかったから」と分析している。

 来年でチームは結成11年目を迎える。次の目標は「1キロメートルを確実に」。そのためにも機体とパイロットの総重量を100キログラム以下にすることを目指す。取材の最後に、前川さんはアルバトロスの魅力について「僕たちのやっている活動は今しかできないことで、人力無尾翼機というまれな研究。やりがいはすごい」と語った。これからも彼らと無尾翼機の挑戦は続く。

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