多くの会社員や若者が行き交うなか、阪急梅田駅2階のエスカレーター前の大型液晶画面「梅田ツインビジョン」に青空を紙ヒコーキが飛び交う映像が映し出される。立命館大学映像学部の学生が企画・制作したオリジナルの短編映像作品だ。

 阪急電鉄株式会社(以下、阪急電鉄)と同大映像学部間での初の産学連携の取り組みとして、「ゆめ・まち・みらい」と「笑顔」をテーマとした短編映像コンテストが行われた。優秀作品が8月21日から9月6日にわたって梅田ツインビジョンで放映された。同学内で作品を募集したところ、21本の応募があり、学内選考を経て、阪急電鉄も加わった最終審査でグランプリ受賞作品と放映作品合わせて7作品が最終的に選ばれた。

 グランプリに輝いた作品のタイトルは、「ゆめをのせ、まちへ、みらいへ」。老若男女がゆめを書いた紙ヒコーキを、まちへ飛ばして、みらいへつなげる姿を描いている。リーダーの飯田雄平さん(映像学部・1年)は、「『ゆめ・まち・みらい』のキーワードをどうつなげるかをとても意識した」と話す。

 制作メンバーは飯田さんと、飯田さんをコンテストに誘った大庭珠央(じゅお)さん(映像学部・1年)。そして、映像にとらわれない発想や作業を担った伊藤ももこさん(産業社会学部・1年)の3人だ。最初、それぞれの思い描く「ゆめ・まち・みらい」は、なかなかまとまらず、多くの議論が積み重ねられた。構想も含め、かかった期間は1カ月。勉強やサークル活動の合間をぬって作品を作り続けた。思い描いた夜景を撮るため、幾組かのカップルのそばを男2人で重い撮影機材と共に移動したこともあったという。

 飯田さんのこだわりは「出演者の自然な表情を撮ること」。映像の出演者は演技をするプロではなく、身近な知り合いから集めたという。1年生でまだ技術もない分、努力でカバーした。「紙ヒコーキが飛ぶ最後のシーンは、100回くらいは撮り直した」と話す。上級生の1人からは「まるでCGかと思った」と言われたほどだ。事業を担当した阪急の都市交通計画部も、「徐々に明らむ空と、夢を運ぶヒコーキが交差する青空が、特に印象的だった」とコメントする。

  飯田さんは、「これからは、人のためになる映像が作りたい」と目を輝かせた。メンバー全員が1年生で、大学生活も始まったばかり。これからどんどん「まち」の中で「ゆめ」と「みらい」へ向かって飛んでいってほしい。

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