クロマグロの完全養殖に成功したことで全国に名を広めた近畿大が、「ウナギ味のナマズ」の開発に成功した。24日、土用の丑の日に合わせ、近大直営の飲食店「近畿大学水産研究所」で「ナマズ御重」を東京・大阪の各店30食を限定販売する。

 開発したのは同大農学部の有路昌彦准教授。ニホンウナギの資源枯渇が懸念され、さらにヨーロッパウナギの輸入が規制された2009年。知り合いの蒲焼き屋や養殖業者らから相談を受けたことをきっかけに、ウナギに代わる新たな資源の開発に取り掛かった。

 ウナギに近い味になる条件として、日本の温水で育つ淡水魚であること、大量に消費しても資源に問題なく、かつ容易に手に入れられるもの、蒲焼きにできるもの、という3点があった。条件を満たしたのは、泥臭さとバサバサした身の「ナマズ」。どうすれば泥臭さが消えるか、また脂がのるかを研究するために4年の歳月を要した。

 全国各地からナマズを取り寄せ食べ比べをし、泥臭さの原因を調査した。地下水で養殖したナマズは泥臭くないことを発見し、先行研究からは原因が河川水に含まれるバクテリアであることが判明。さらに餌を工夫することでウナギの味に近づけられることが分かったという。

 模索段階において有路准教授は「3桁に及ぶ数のナマズを捕まえては蒲焼きにした食べた」と当時の苦労を語る。ウナギ味とかけ離れたものが出来上がる度、本当に成功するのかという疑問を抱きつつも、おいしいものを作りたい、みんなに喜んでもらいたいという思いで何度も試行錯誤したという。「脂の量を増やす餌をやったら、蒲焼きにした時にラードみたいになって・・・」という苦い思い出も。

 今年2月、理想とするウナギ味のナマズの開発に成功。5月にはデータ収集のため、密かに200食限定で試験販売したところ7割の人が「また食べたい」と回答し、大きな反響を得た。近大も正式にプレスリリースを行い、メディア向けの試食会を経て今回の限定販売に至った。

 今年の冬に5トン、来年には80トンから100トンの生産体系を作ることが今後の目標。「再来年には一般の飲食店でも販売できるようにしたい」と意気込む。

 24日には有路准教授も東京の飲食店を訪れる予定だ。「土用の丑の日は何を食べますか」という質問をすると「できればナマズ御重を食べたいけれどお客さんで全て無くなると思うので、ナマズ御重のたれでご飯を食べます」と冗談を交えた。

鹿児島県にある養鰻会社「牧原養鰻」で養殖されているウナギ味のナマズ
鹿児島県にある養鰻会社「牧原養鰻」で養殖されているウナギ味のナマズ
ウナギ味のナマズを開発した有路昌彦准教授
ウナギ味のナマズを開発した有路昌彦准教授