多くの大学が大学敷地内の分煙化や全面禁煙化に取り組んでいる。背景には、2003年に施行された健康増進法や文科省の受動喫煙に関する通知がある。どちらも非喫煙者がたばこの煙を吸ってしまう受動喫煙の防止が目的だ。教育機関で公共機関でもある大学には防止策が求められている。

 同志社大は04年から学内全面禁煙を目指し、前段階として分煙化を推進している。建物の入り口付近など通行人の多い場所や、学生らの苦情が集まった喫煙場所を撤去した。今出川キャンパスで163カ所、京田辺キャンパスで281カ所あった、喫煙場所を現在では12カ所と21カ所まで減らした。また、学内にあったたばこの自動販売機をなくし、大学生協での販売も禁止した。

 関西大では16年度からの学園敷地内の全面禁煙化を目標としている。昨年には、千里山キャンパス内にある喫煙所の吸い殻の本数を調査。さらに実験段階として千里山キャンパス内の3カ所の喫煙所を撤去した。関大学長室学長課の工藤竜太さんは「本学としては、受動喫煙防止の観点から取組みを進めている。撤去した3カ所の様子を見つつ進めていく」と話した。

 しかし関大に通う女子学生は「現時点で分煙もきちんとできていないのに全面禁煙化を進めるのは厳しいのでは」と話す。喫煙所の外での喫煙や歩きたばこ、吸殻のポイ捨てを目にするという。喫煙者も「喫煙所を設けておかないと学外に吸殻を捨てる人が増え、近隣住民とのトラブルが増えるのでは」と指摘する。一方で、他の喫煙者は「時代が変わったら適応していかないとだめだ」と理解を示した。

 分煙の徹底により受動喫煙の防止を行う大学もある。関西学院大は11年秋から分煙を実施している。それまで道の至るところにあった灰皿を撤去し、屋外で人通りの少ない場所に喫煙ブースを設置。ブースの中央に灰皿が置かれている。学内では職員が巡回し、喫煙ブース以外での喫煙がないか確認している。「全面禁煙を確実に成功させる策がないから、今は分煙を徹底するしかない」と、学生活動支援機構事務部の椿本伸明さんは話す。

 全面禁煙化が受動喫煙を防ぐ最善策とは言えない現状。大学はそれぞれの条件に合った、非喫煙者と喫煙者両方が納得できる方法の模索に迫られている。