新学期が始まってから2カ月。そろそろ新しい環境に慣れてきたころだろう。しかし、新しい環境になかなかなじめず、「五月病」になる学生も多い。学生にアンケートをとったところ67%の人がそのような症状の経験があると答えた。

一体、どんな人がなりやすいのか。「真面目な人がなりやすい」、「周囲に流されやすい人がなりやすい」など色々なことが言われているが、「あまりに多彩すぎて明確なことは言えない。『誰でもかかりうる、季節性のカゼのようなもの』だと認識してもらってよい」と関西大の社会学部心理学専攻の佐藤寛准教授は言う。

佐藤准教授は「いわゆる五月病を考える際に重要なのは『4月』の存在だ」という。新しい年度が始まる4月は気持ちが新たになって、わくわくしたり、張り切ったり、不安だったりする。いずれにしても、4月は他の月に比べて知らない間にエネルギーを使う。自分でも気づかないうちに4月の疲れを抱え、連休で緊張の糸が切れる。そのまま連休明けの日常に戻ろうとすると,思うように心も体も動かない、ということになる。夏休みや冬休みの後も精神的にはリスクが高まるが、4月の存在が五月病を特別にしているのだという。

五月病にならないためには、連休中の生活習慣を普段と大きく変えないようにすることが大切だ。佐藤准教授によれば五月病だと思っているものの多くは「生活習慣のパターンが崩れてしんどくなってしまっているものがほとんど」だと言う。しかし、原因はそれだけではないのかもしれない。若者の幸福について研究している立命館大の柴田悠准教授は「五月病で苦しんでいる人は『今』を楽しめていないことが問題なのでは」と指摘。友人との交流など今の環境を楽しめていれば目標がなくても五月病にならないはずだと話す。五月病になる人は未来志向で自己のための行動に重点を置き過ぎなのではないだろうか。一方では五月病を別の面から捉える人もいる。大阪大学学生相談室の石金直美准教授は「レールの上を挫折なくスーッと行くのがいいとは思わない。大学時代の悩みは買ってでもするべきだ」と言い、「考え直す機会にできたならそれはいいこと」と成長の一助にすることを提案した。

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