大和野菜を使ったサイダー2種類を開発・商品化した奈良市の帝塚山大で、シリーズ第3弾が計画されている。開発者の稲熊隆博教授(現代生活学部食物栄養学科)が、商品化は未定としながらも、「びっくりするような」野菜を使った開発を進めていると明かした。

 同大ではこれまでに、大和野菜の「片平あかね」「大和まな」を使って「大和ベジサイダーあかね」「大和ベジサイダーまな」を開発してきた。第3弾のアイデアは食物栄養学科の学生から募った。各商品と対応したオリジナルキャラクターを文化創造学科と経営学科の学生らが考案し、シリーズ3種類を3姉妹に例える。「まな」は長女で「おとなしいお姉さん」、「あかね」は「少し個性の強い次女」で、正体不明の第3弾は自己中心的で「はねっかえりの末っ子」としている。

 稲熊教授が片平あかねに注目した理由は「色」。あかねに含まれる色素アントシアニンが生み出す鮮やかな赤い色に魅了されたそうだ。大和まなについては、奈良県で栽培される野菜を代表するものとして適しているからと語った。

 地域おこしを目的に全国各地で販売されている特産品を使った「地サイダー」を参考に、稲熊教授は大和野菜を使ったサイダー開発を進めてきた。2013年秋に奈良県山添村の祭りで、片平あかねを初めて見たのがきっかけ。第2弾の原材料に大和まなを選び、今年4月、商品化に至った。大学祭で販売したところ、一度飲んだ後に再び買う「リピーター」の姿が目立ったという。野菜の風味は強くなく、シークワーサーやリンゴの果汁でマスキング(別の香りで包み込むこと)されてサイダーとして抵抗感のない口当たりに仕上がっている。

 大和野菜サイダーの商品化は、大和野菜の生産量増加を促進する可能性も秘めている。片平あかねと大和まなは収穫期が冬の一時期に限られるが、サイダーの原料なら、ある程度保存しておいたものでも利用できる。さらに、見た目の悪い野菜は生のままでの販売には向かないが、サイダーの原料にするなら問題ない。稲熊教授が「食べ物の中に捨てる(しかないような)ものはない」と語る通り、素材を最大限に生かす活用法で、奈良の産業を応援する。

 第3弾の開発は現在、マスキングに使う香りをこれから選定する段階。「とんがったやつ」の誕生が待たれる。