vol.253 大阪都構想 府大×市大
5月17日、特別区設置住民投票の結果が開示され、反対多数により否決となった。
(賛成 69万4844票・反対 70万5585票、投票率 66.83%)
特別区設置の目的のひとつとされていた大阪府と市の業務一元化の対象には、大学も含まれる。住民投票で何が決まったのか、大阪府市大統合問題とは何なのか。「何もかもよく分からないまま住民投票が終わってしまった」。そんな大学生に読んでほしい。
いわゆる「大阪都構想」ってなに?
「大阪都構想」とは、大阪市を廃止し、その領域に五つの特別区を設置する構想のこと。東京都と東京特別区の関係がモデルとなっている。大阪維新の会が提唱、推進。17日、特別区設置住民投票によって否決された。
賛成派は府と市による二重行政が解消されると主張する一方、「有用な文化施設まで二重行政に含まれている」などと言う反対派も多い。
実際に名称が大阪市から大阪都に変わるわけではないため、イメージと実際の政策の間に乖離が生じている。「そもそも都構想という名称を使って問題を語るのが間違い」(住友教授)と批判する声もある。
大阪府大・市大統合問題
特別区設置の目的のひとつとして、推進派が挙げていた大阪府市業務一元化。これには病院や交通機関に並び、大学も含まれる。大阪府にある2つの公立大学・大阪府立大と大阪市立大の統合は、大阪府市総合本部が設置された2011年に本格的な話し合いが始まった。大阪府大総合企画課・網城正徳(まさのり)氏は「大阪府市大統合と都構想は切り離して考えている」と言い、直接的な関係性は無いとする意見が強い。
大学側は統合に積極的だ。大阪市大企画総務課・福谷樹幸(しげゆき)氏は「文系に強い大阪市大と理系に強い大阪府大。個性の異なる2つの大学が統合することで、シナジー効果(相乗効果)を望める。大阪を牽引する国内最大規模の公立大を目指す」と話す。
反対の声もある。住友陽文教授(大阪府大現代システム科学域・歴史学)は「特別区設置が可決された場合、府市大統合はおそらく一気に加速しただろう。図書館などの文化施設や近隣大学の充実といった、学問の多様性を担保する大学周囲の環境が大切。両大学が統合されれば、大学の多様性が目減りし、大阪の文化的・知的な環境は悪くなる」と語る。
「多様な貢献をしている大学を統合すると、都市の創造性の観点ひとつ取っても損失。学生には当事者意識を持って、実態を観察し、考えてほしい」と今川晃教授(同志社大政策学部・大学院総合政策科学研究科)。
特別区設置住民投票は否決されたが、両大学の統合計画が中止されるわけではない。結果はどのようであっても、学生は身近な問題として、今回の住民投票に自分なりの意見を持つことはできていただろうか。
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