Vol.250 夜の商店街彩るシャッターアート
京阪出町柳駅から歩くこと5分。午後7時過ぎの「出町桝形(ますがた)商店街」には、華やかに彩られたシャッターが見える。シャッターアート制作者4人のうち、京都造形芸術大の3人に取材することができた。
京都精華大の片木(かたぎ)孝治准教授から声が掛かり、今回の企画が始まった。店からシャッターの絵について希望する点が挙げられ、描き手との話し合いで担当を決定。2月末の締め切りに向けて昨年11月から本格的に作業が始まった。
南田真吾さん(京都造形芸大・4年)は「リビングまつむら」のシャッターを担当。「(店主に)夫婦で営んでいるお店なので夫婦の絵を頼まれた」。山小屋に住む夫婦がふもとまで下りて、リビングまつむらでキッチン用品を買う様子を描いた。店主からの希望だった「あたたかくやさしい」絵に仕上がった。シャッターアートに取り組んだ理由を尋ねると「これほどの大きさの絵を描くことってそうない。日常に自分の絵が残っていくのはいいなと思って」。
作業は主に「リビングまつむら」定休日の日曜日だった。作業をしていると道行く人に「調子どう、進んでる?」と声をかけられることもあった。
100円ショップのシャッターを担当した酒井恭成さん(同大・3年)と伊藤大輔さん(同大・4年)は百人一首をモチーフにした絵を描いた。京都は百人一首の中心地であることに加えて、100円ショップの「100」から連想した。百人一首の人々が現代に現れて100円ショップの品物を使っていたら、というアイデア。春夏秋冬や1日の時間の流れの中で生きる100人が描かれている。「ぱっと見てストーリー性があることが分からなくても、毎日通る人が『よく考えればこれって?』と気付いてくれたら」と伊藤さん。
苦労も多かった。定休日のない店のため、作業はバイトを終えた午後11時以降から。たいてい翌朝の午前5時まで続いた。夜のアーケードは風がよく通り、冬の作業は極寒。服を6枚着込んでも、指先が冷たく筆が握りづらかった。
夜の商店街を歩く人々の目を楽しませるシャッターアート。商店街を盛り上げる助けになりそうだ。
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