VOL.249 83歳の春、大学卒業
この春、多くの大学生が卒業を迎えた。大阪女学院大学の国際・英語学部を卒業した藤木満寿子(ますこ)さん、御年83歳もその一人だ。「ふーちゃん」の愛称で同級生や職員に親しまれた藤木さん。なぜ彼女は79歳から大学に入ろうと思ったのか。大学生活や生い立ちなど、さまざまなお話を聞いてみた。
「課題に追われてとにかく忙しかった。でも大学を辞めようとは一度も思わなかった」と藤木さんは大学生活を振り返る。心がけたのは「授業を休まない」ことと「課題を期日までに提出する」こと。4年間で単位を落とした授業は一つだけだった。
1931年生まれ。国民学校に6年間通った後、高等女学校に進学したのは1944年のことだった。当時日本は第二次世界大戦下ということもあり戦時中に女学校に通えたのは最初の1学期だけ。終戦後、GHQの命令により男女共学となった高等学校で、英語を学べる喜びから ESS(英会話クラブ) に参加し、自由な学生生活を実感した。大学進学も考えたが、家庭の経済的事情や当時の「女性は大学に行くべきではない」という風潮から進学を諦めざるを得なかった。その後就職し、結婚。50年以上主婦をしてきたが、「英語を学びたい」という思いが消えることは無かった。家族の後押しもあり通信制の高校に3年間通った後、大阪女学大に入学した。
藤木さんが卒論のテーマに選んだのは『日本の在宅介護について』。実際にケアマネージャーやホームヘルパー、在宅介護をしている人に話を聞いた。卒論は全編英語で書き上げ、発表も英語で行った。身振り手振りを用いるなど、堂々とした発表で高評価を得た。
卒業してから1か月が経つ。最近は大学の図書館で英語の絵本を読んでいるという。また、週に1回大阪女学大の「エクステンションスクール」で子ども達に絵本を読み聞かせるほか、卒業生のゼミにも参加する予定だ。「いろんなところに参加しないとどこにも行かなくなっちゃいますから」と笑う「ふーちゃん」のパワフルさに脱帽だ。
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