悪質な労働条件で雇用を行う「ブラックバイト」が問題視されている。長時間労働を課されるなど、学生生活に支障をきたすことが多い。ブラックバイトを見極め、自分の身を守るために何ができるのか。実際にブラックバイトを経験した学生に、労働条件の実態やアドバイスを聞いた。

 大手食品企業の店舗でアルバイトをしている稲葉航太さん(関大・1年)は、悪質な労働条件に苦しんでいる。閉店後、店舗内の掃除や食器の洗浄をするために残業。閉店後30分までは残業代が支払われるが、全ての業務を終わらせるのには最低でも1時間はかかる。「5年くらい務めている人は30分でこなせるが、学生のアルバイトにはそこまでできない」と訴える。

 また、1週間ぶりにアルバイトに行った際は、30分ほどかけて新商品を覚えることとなった。覚えるのにかかった時間は「働いていないから」と給料を減らされたという。さらに、休むときには「他の人を探せ」と言われるなど、不満は募っていった。

 次第に自身の労働条件がおかしいことに気付き始めた稲葉さん。しかし同僚に話してみると「仕方ない」という意識を持っている人が多かった。「残業時間を少しでも減らすために休憩時間も休まずに作業をする人もいる」と稲葉さんは話す。現在も同じアルバイトを続けてはいるが、別のアルバイトを探し、辞めることを考えている。

 関西の学生らからなる学生労働組合「関西学生アルバイトユニオン」共同代表の渡辺謙吾さん(関大・3年)は、過去に何度かブラックバイトを経験したことがある。

 カレー屋でアルバイトをしていた際には、条件を満たしていれば認められるはずの有給休暇が「有給休暇は正社員だけ」と、アルバイトという雇用形態を理由に認められなかった。さらに、9時間以上働いても給料が割増されることはなかったという。

 また、弁当宅配のアルバイトでは、店長からの理不尽な要求や罵倒に苦しんだ。注文を受けた際、実際に宅配をするのは渡辺さんだが、客に伝える配達時間は店長が決めていたという。「自分はできる」、「60キロ出せ」などと言われて渡辺さんの言葉は聞き入れられず、時間通りに宅配できなければ、渡辺さんの責任にされていた。

慣れに危険潜む
しんどさ相談を

 悪質な労働条件について渡辺さんは、「慣れてしまえばいい、と思うようになることが問題だ」と考える。稲葉さんも「労働法などを知らなければ、労働条件がおかしいことにも気付けない」と話す。

 また、「しんどいと思ったら一度調べる、または誰かに相談するなどしてほしい」と稲葉さんはアドバイス。自身の労働条件が「おかしい」かどうか判断することがブラックバイトから身を守ることにつながる。