VOL.245 家でモコモコ おしぼりからキノコ
おしぼりから生える、キノコ。辛うじて隙間から顔を出すという程度ではない。モコモコ生えている。それはもうおしぼりが見えなくなるほどだ。自宅でもおしぼりでキノコを育てられるキットが、グランフロント北館ナレッジキャピタル(大阪市北区)で20日と21日に配布された。
配布したのは、甲南大学の田中修教授(理工学部生物学科)と樋口亮太さん(生物学科・修士課程)らゼミ生。おしぼり培地の一般化を目指していて、周知するためにキットを配る。無菌状態の袋の中に、栄養液を染み込ませたおしぼりとキノコの菌糸が入っているものだ。条件を整えれば、タオル地や木綿、麻などさまざまな布から簡単に生やすことができる。
おしぼり培地のきのこは材料が揃えば家庭でも栽培可能だ。まず、米ぬかと水でできた栄養水を無菌状態の布に染み込ませる。米ぬかで布は鈍い黄色になるが、菌糸を入れて約2週間置いておくと、菌糸が広がり白くなる。そして、白くなったら一部の菌糸をかき分けて、約5㍉㍑の水を入れる。大きめの容器を用意し、空気穴を開けたラップを掛けて水槽を覆う。水槽に湿度を保ったまま、約2週間待つ。あとは、日の当たる場所で温度を約15度に保って待つだけだ。温度が20度を超えたり4度を下回ったりする環境下にあると、成長が止まることがわかっているため、注意が必要だ。
通常、キノコの培養はおがくずで行うが、1度使用したおがくずは再利用できないため、産業廃棄物になり問題とされていた。そこで田中教授は産廃削減に適したキノコの栽培方法を研究。水やガラスビーズなど、さまざまな培地で試行錯誤を繰り返した結果、おしぼり培地を生み出した。おしぼりなら、菌糸の収穫後、米ぬかとセルロースを洗い流してから洗濯することで何度でも利用できる。さらに、タオルの大きさ次第で表面積を調節できることや軽さなども利点だ。
現在、人工栽培できるのは腐った木材に生息する種類のキノコのみ。「今後は、地表の生きた木と共生するキノコの栽培に向けて研究を進める」と樋口さんは意気込む。
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