若者たちの間やネット上では、新しい言葉が次々に生まれている。これらは一般的に「若者言葉」と呼ばれ、近年注目され始めた。FacebookやTwitterなどソーシャルメディアを使う人が増え、誰もが世界中に発信できるようになった。地域を越えて新しく作られた言葉が多くの人に広がっている。

 ソーシャルメディアを利用しない人への広がりについてはどうだろうか。大阪大の小矢野哲夫教授(日本語学)は多くの場合、流行の言葉を取り入れ周囲の言葉遣いを先導する「言語ボス」の存在を指摘する。「周囲はその人物に影響されて言葉遣いをまねする」という。

 新しい言葉を積極的に取り入れて使う大学生も多いが、全員が同じ言葉遣いをするわけではない。いつも話しているはずの同級生が、突然知らない言葉を使い、何を言っているのか分からず戸惑う——同じ大学生でもそんな経験は少なくない。しかし就活の場などで若者言葉を使う学生はいない。これについてコミュニケーション論に詳しい同大の辻大介准教授は、「大学生間で言葉が通じないトラブルは、身内感の取り間違えから起こるものだろう」と考える。

 場面を考えて使わなければいけない一方で、これらの言葉には仲間意識を高める効果がある、などポジティブに評価もされる。

 関西大の日高水穂教授(日本語学)は「言葉は常に変化し続けるもの」とし、さらに若者言葉は言語的に合理性があるとも説明する。小矢野教授は「中身はなくていい。言って楽しくなるという点が大事だ。僕が学生のときは、今のような言葉遊びに対する寛容さがなかったから羨ましい」と語る。

 言葉の変容や新しい言葉の流行についていけず理解できないとする声や批判意見も多いが、寛容な解釈をする視点も失ってはならない。新しい言葉を楽しむ大学生たちから目が離せない。

(聞き手=田中弘二)