経団連の指針により、16年度卒の就活生から就職活動の開始時期が後ろ倒しになる。しかし、経団連に加盟しない企業などでは、選考活動が始まる8月以前に実質的な選考を始めることが予想される。企業の実質的な採用活動が水面下で進む中で、近年新しい形の就活が現れた。新卒向けマッチング・サービスだ。

 「新卒向けマッチング・サービスは『特別な選考ルート』ではない。結局は面接を経て内定につながるため、『別のルート』にすぎない」と神戸大キャリアセンターの長谷川雄哉氏は話す。マッチング・サービスを利用すると、業者から紹介された学生を企業が選ぶことになる。学生は「選ぶ立場」から「選ばれる立場」へと変わるため、企業からのオファーを精査する能力が求められる、というのが長谷川氏の分析だ。「精査をせず安易にオファーを受けては、内定辞退などの信用問題が起きる危険がある。また一対一の関係なので、企業が不正・不信な行為をとった場合は、1人で解決しようとせず誰かに相談するようにしてほしい」。就活の目的がいい加減なままに手段が増えることになっては、逆に振り回される結果になると就活生に忠告した。

離職率低下に

 転職業界ではごく自然な方法であり「就活市場が変化し続ける今、従来の就活と異なったさまざまな方法が出てくる」と話すのは、実際に新卒向けマッチング・サービスを運営する、株式会社インテリジェンス新卒採用責任者の佐藤裕氏。まだマッチング・サービスは主流になっていないが、毎年50万人以上もの就活生が存在する新卒市場は大きいと見ている。佐藤氏によれば1年ごとの就活市場の変化はとても大きいものがあるという。就活塾のような新しい形や大学の就職支援とリアルな就活市場とのギャップなどさまざまな課題が増えている。社会に出たことのない学生の視野はどうしても狭く、多様な価値観を持っていないケースも多いため、入社後にギャップを感じ、数年で退職することもある。その点マッチング・サービスでは「入社の意思決定までに正しい情報をしっかりと得て考えることができるので、離職率を低くするための1つのツールになっている」と話す。

慎重な判断を

 新しい形の就活でも、それぞれメリットとデメリットがある。新卒向けマッチング・サービスでオファーを受け取っても手放しに喜んで飛びつくことは避けるべきだろう。スケジュール変更の影響で早期に人材を囲い込みたい企業に振り回されず、社会や自分を適切に理解して、考え抜いた末の選択が求められる。         

◆◇◆マッチング・サービス◆◇◆
 対象者のスキルや職種の希望などをエージェントが確認。個別の適性を考えた上で、対象者の希望に合い、対象者のような人材を求める企業を紹介する。就活生は紹介後に、通常複数回の面接を受けることになる。