vol.217 重要文化財 神戸女学院
中等部・高等部を含む神戸女学院の校舎12棟が5月16日、国の重要文化財指定の答申を受けた。学校建築での重要文化財指定は兵庫県内初、ヴォーリズ建築としては全国初となる。
神戸女学院は1875年10月に現神戸異人館街の一角に創設され、1933年、現在の西宮市岡田山に移転。ウィリアム・メレル・ヴォーリズがキャンパスと校舎群の設計を担当した。ヴォーリズの設計による17棟のうち、阪神淡路大震災の被害を受け、取り壊された5棟を除く12棟が国の重要文化財に指定。さらに重要文化財を形成する景観として藤棚が附(つけたり)指定され、キャンパスほぼ全域が重要文化財指定を受けることとなった。昨年、移転80周年を迎えた校舎。重要文化財に指定されている他の建築物と比べると、決して古い歴史があるわけではない。では、どのような基準で指定されたのだろうか。
文化庁は重要文化財指定の理由について「美的均整の追求と実用への配慮が十全に達成されており、意匠的に優れている」と発表。外観をスパニッシュ・ミッション風に統一しながらも、空間の独創的な構成や、天井の装飾などの変化に富む細部の造形で個性を持たせた点が決め手となった。
ヴォーリズの妻が神戸女学院大出身だったこともあり、ヴォーリズには校舎の設計に特別な思いがあったという。「建物それ自身が生徒の上に積極的影響を及ぼす」という設計思想を掲げ、教育施設や宗教施設としての品性を崩さぬよう、洗練された美を表現。宗教的施設である講堂や礼拝堂と教育施設である図書館を、文学館と理学館を向かい合わせに設計するなど、神戸女学院が掲げる自由教育の精神も込められている。
この80年の間で学生数は約5倍に増加。「(大学の規模が)それほど大きくならなかったため、新しい建物を建てる必要がなかった。昔から続く少人数教育が、この校舎を守ってきた」と森孝一院長は話す。
重要文化財は国の財産。指定を受けると外観などを容易に変えられないため、この建物、この規模を維持していかなければならない。ヴォーリズが残した建築群は、これからも女学院生の学びの場としてあり続ける 。
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