【6・7月号掲載】就活スケジュール変更 「実質的選考」広がるか
昨年4月、日本経済団体連合会(経団連)は採用に関する倫理憲章を見直した。現在の3年生から就職活動のスタートが後ろ倒しになり、「就活の短期化」が進もうとしている。しかし、今回の変更は形式上の変更に留まることが懸念される。優秀な人材を効率よく確保するため、企業はルールを守りながらも解釈を広げ、早期から学生に接触することが予想されるからだ。
来年度から説明会の広報活動が3年生の3月に、面接などの選考活動が4年生の8月になる。内定出しの解禁は従来通り4年生の10月のまま。従来に比べ広報活動が3カ月、選考活動が4カ月後ろ倒しになるが、内定を出す時期は変わらず、全体として就活は短期化するとされている。
しかし就活生にとっては、このスケジュール通りに就活が進むことは考えられにくい。企業は規定の範囲内で、「実質的な選考」とも取れる活動をする可能性があるからだ。
そもそも経団連の倫理憲章に賛同するのはおよそ900社弱と企業全体のごく一部。しかもあくまで指針のため、賛同企業に対しても拘束力を持たない。さらに8月に解禁される「選考活動」が指すのは面接と筆記試験のみ。Webテストやエントリーシートの選考は広義の選考として扱われ、8月以前に行う企業が多くなることが考えられる。今年度の年功活動でもWebテストやエントリーシートを導入している企業はあったが、来年度はさらに増えることが予想される。
2次採用厳しく 「人材の奪い合い」
ある大阪の放送局の人事担当者は「他者がフライングで採用活動を行っても責められない」と漏らす。内々定を出しても辞退する学生がいた場合、例年行っていた2次募集の時期が秋以降に。その不安から人材の奪い合いが想定される。
一般的に企業の採用活動は、すべての内々定者を決めるまで順調に進んでも2、3カ月ほどかかる。面接を行う期間が短くなる新スケジュールでは、企業としても完全にスケジュール通りに採用を進めるのは厳しい。他社に人材を奪われることを考えれば、何か対策をせざるを得ないのが本音だ。
就職情報サイトマイナビ副編集長の土山勇さんは「企業は優秀な人材を獲得するために、さまざまな採用活動を行う可能性があることが考えられる」と話す。また就活生にとって今回の変更は、採用活動開始から時間のない中で試行錯誤しながら就活をしなければならないこと、8月からの複数の面接の日程が重なる可能性があることを指摘する。
「短期化=簡素化」とは言えない来年度の就活の姿が浮かび上がってきた。
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