「大学生の96%はマンガ・アニメが好きである」。前回(vol.202)の調査により、多くの大学生がマンガ・アニメに好意的であることを明らかにした。それでは、今日の大学はマンガ・アニメに対してどう向き合っているのか。今回は、しばしばこの文脈においてメディアで取り上げられる、京都精華大と大阪芸術大を調査した。

海外へ発信 留学生を誘致

  近年、マンガの描き方を大学で学ぶ留学生が増えている。

 「マンガ学のトップランナーでなければいけない」。そう語るのは京都精華大の広報課。2006年日本初のマンガ学部創設をはじめ、マンガ研究の最先端を走ってきた。前身の京都精華短期大学開学の1968年当時から「人間尊重・自由自治」の理念を一貫。賛否両論のあったマンガの学術的研究も推進している。

 プロのマンガ家を育成する「ストーリーマンガコース」、編集者を育成する「マンガプロデュースコース」など、マンガ学部全体で実践力を備えたプロの育成を重視。講師も現役漫画家や編集者だ。専門学校との決定的な違いは「大学ならではの教養の深さ」。ストーリー制作などに必要な一般教養を身に付けられる。さらにマンガ専門の英語教育を開講するなど、海外への発信を重視している。

 留学生の人数も、年々増加傾向にあるという。現在はマンガ学部に84人、大学院マンガ研究科に32人の留学生が在籍。出身は東アジアが多いが、欧米・東南アジアからの留学生も増加している。多くは母国で日本のマンガ・アニメに親しみ、「技術を学んで母国で発信したい」という動機によるという。

 また京都精華大では、クールジャパンとも呼ばれる日本のマンガ・アニメ文化の海外発信を積極的に推進し、京都市と共同で「京都国際マンガミュージアム」を運営。学術的にも「マンガ学」の世界的拠点となっている。

メディア発信で 学生に活躍の場を

「全員がプロとしてデビューできるわけではない」。大阪芸術大の広報課はそう語るが、どうにも苦言には聞こえない。この大学の強みがそこにある。

 全国でも珍しい、大学発のマンガ雑誌『ストレンジャーソレント』。本誌は大阪芸術大が、同人誌『河南文学』を前身に、学生の作品を載せた商業誌『河南文藝漫画編』『大学漫画』の発行を経て昨年9月に創刊。関西のコンビニを中心に購入できる。現在は学生の作品を掲載していないが、雑誌の出発点は「学生の作品を社会に発信すること」。今後は学生の秀作マンガを発信したいという。

 2005年にはマンガ・アニメを専門に扱うキャラクター造形学科が発足。クールジャパン人気など、社会のニーズに応える要領だ。プロ指導の専門教育のみならず、ゆるキャラ「いしきりん」(大阪府東大阪市)の制作など、企業や行政法人のオファーに応じることも。

 とはいえプロの漫画家やアニメーターの入り口は狭い。ところが彼らの就職先は、そう狭いものではないのが実情だ。「近年は、国や企業がイメージ戦略の一環でマンガ・アニメを積極的に活用している」と広報課。そのような宣伝・広告に加え、海外のクールジャパン人気が新人クリエイターを待ち望んでいるため、卒業生の活躍の場は拡大している。

取材後記

 海外や国内外で加速するマンガ・アニメの需要を背景に、大学は形を変えている。京都精華大の留学生誘致も、大阪芸術大のメディア発信や産官学連携も、ゴールはクリエイターの輩出にある。従来マンガ・アニメのプロは、師事や独学、専門学校などを経るもの。今後は体系立った教育を受けた大学発のクリエイターが主流となるのだろうか。
 (聞き手=渡邊拓也)

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