vol.205 新人漫才ロボ、売れてます
ロボットに漫才を披露させる。そんな奇想天外なコメディーを可能にしたのが甲南大の「漫才ロボットプロジェクト」だ。チームの主軸として漫才ロボットの頭脳をプログラムしたのは、知能情報学部灘本研究室に所属する大学院生真下遼さん(自然科学研究科・修士課程)。2体のロボット「あいちゃん」と「ゴン太」に時事ネタ漫才をさせることで、新たなニュース発信媒体としての可能性を模索している。
2体は「つかみ」「本ネタ」「オチ」という漫才特有の展開に沿い、独特のデジタルボイスに乗せて関西弁で掛け合いを繰り広げる。人名などの特定の名詞をWeb上のニュース記事から抽出し、事前にプログラムされた「ノリ突っ込み」「対立ボケ」といったギャグのパターンに当てはめる。ネタに使われる単語はウィキペディアを使って詳細説明や関連語の抽出にも利用される。集まった情報をロボットがギャグにして話すというわけだ。
例えばロボットのコンピュータに「国立競技場」と入力すると、関連するニュース記事の内容をツッコミ役の「あいちゃん」が説明。そこにボケ役「ゴン太」が競技場と競馬場をすり替えて「有馬記念!」と反応したり、「きょうぎ」を「しょうぎ」にして将棋のルール説明をウィキペディアから引っ張ってくる。すかさず「なんでやねん!」のツッコミで笑いを誘う。聞き手が楽しみながらニュースに親しみ、関連知識も広がるツールだ。
真下さんがプロジェクトに携わり始めたのは学部3年生の時。先輩のプログラムをベースにロボットの頭脳作りが始まった。そのために必要だったのは漫才自体の研究。ネタの展開を数値化してプログラムに打ち込むために、漫才のパターンと笑いを起こすロジックを見つける必要があった。「好きだった漫才が少し嫌いになった」とこぼすほど、来る日も来る日も漫才ビデオの鑑賞に没頭した。言葉のギャップを数値化して笑いの根拠とするなど苦心を続け、昨年の秋にひとまずシステムが完成。頭脳を乗せるハードウェアの異常にはロボット専門の学生と共に対処し、頻繁にメディアに登場するまでに育て上げた。
将来的には「テレビに代わるシステムになってほしい」と真下さん。自身もニュースに触れる機会がもともと少なかっただけに、漫才ロボットのメディアコンテンツとしての可能性に期待をかける。人に笑いと知識を届ける存在にするため、今日も愛する2体の頭脳にメスを入れる。
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