19歳の若者が自らの手で田植え、稲刈り、酒造りを行う。そして20歳を迎え、自分たちの作った日本酒で乾杯する。そんな1年がかりの体験ができるのが、今年で第3期目となる「19歳の酒プロジェクト」だ。5月25日には滋賀県東近江市で田植えが行われ、プロジェクトに参加する19歳たちが汗を流した。

 19歳の酒プロジェクトを始めたきっかけを「日本酒のイメージを改善したかったから」と話すのは「かどや酒屋」(大阪府茨木市)の角本稔さんだ。二日酔いしやすいといった日本酒へのマイナスイメージを払拭するために、かどや酒屋を含む茨木市の酒屋2店舗、高槻市の酒屋1店舗の3店舗が酒屋にできることを話し合った。その際、過去に一度同様の企画が行われていたことを知ったという。自分たちでもできるかもしれないと考え、プロジェクトを始めた。「自分が大学生のころは、サークルの飲み会などで安い日本酒を飲まされ、日本酒に対して悪い印象を持っていた。今の若者もそうだと思う」と角本さん。19歳のときに酒造りを体験し、自分たちで作った思い入れのあるお酒で乾杯すれば、印象は良くなるはずだ。

 プロジェクトは1年を通して行われる。5月に田植えを行い、7月下旬から8月上旬には田んぼに設置するかかしを作る。9月下旬に稲刈りをし、2月に酒造り。そして3月には出来上がった酒の瓶詰め、ラベル貼りを行い、最後に乾杯。自分たちの作った酒を味わう。プロジェクトに参加する19歳はほとんどが大学生で、今期は同志社大や追手門学院大で飲酒文化の講義を受講している学生や、関西大の日本酒同好会のメンバーなどが参加している。田植えや稲刈りを一度も経験したことがない参加者も多く、田植えを終えると「こんなにしんどいと思わなかった」と声をそろえる。苦労を重ねて作った酒で、仲間たちと二十歳を祝う。これが19歳の酒プロジェクトの魅力だ。

 プロジェクトを通して伝えたいのは、「日本酒の良さ」。そのために、今後もできる限りプロジェクトは続けていくという。「お酒は適量であれば体に良いし、人と人との距離を縮めてくれるとても良いもの」と角本さん。「今は日本酒サークルなど、お酒の良さやアルコールの怖さを理解している学生もいる。そういう若者が、ほかの若者にお酒について発信していくのをサポートしていきたい」。若者に「日本酒の良さ」が広まることに期待を込める。   

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