UNN関西学生報道連盟では、関西圏を中心に大学生213人に秘密保護法に関する意識調査を行った。「この法律に関心があるか」という質問に8割が「はい」と答え、学生の関心の高さがうかがえた。だが、「法律の具体的内容を理解できているか」という質問には3割が「いいえ」、「どちらかといえばいいえ」と回答。またこの法案に関する情報入手にあたり、複数の媒体を比較したという学生は6割に上った。自由回答では「メディアが報じる例が極端でうんざり」、「偏重報道に惑わされて何を信じればいいかわからない」といった意見が多く寄せられた。  「秘密の『保護』の観点ばかりが取り上げられ、肝心の『管理』について語られていない」。公文書管理に詳しい都留文科大非常勤講師の瀬畑源(せばたはじめ)氏は、公文書管理の実態を知ることが秘密保護法の理解につながるという。  日本では昔から各省庁の判断で文書の管理や廃棄を自由に行ってきた歴史がある。「消えた年金問題」など公文書のずさんな管理があらわになった結果、2011年に公文書管理法(※)が施行された。しかし公文書管理法に該当する規定が無いため、各省庁は秘密指定を自由に運用し続けた。昨秋報道された、防衛省による防衛機密の大量破棄の発覚が一例だ。秘密保護法は安全保障の秘密情報の漏えいを防ぐために制定された。 ※公文書管理法…文書の作成から管理・保存・廃棄・移管までを法定化したもの  「戦時中のように監視される」「表現の自由がなくなる」。マスコミの報道のように、民間人の自由に影響はあるのだろうか。瀬畑氏は「対象となる情報は安全保障と公安情報。基地問題や集団的自衛権に無関心な人には直接的ダメージはゼロ」という。反対意見の多くが直接的ダメージの観点から語るが「情報を漏えいする方が悪い」と反論できてしまう。  瀬畑氏は「治安維持法と同じように、小説や映画が全て監視されたり、オスプレイを監視するだけで逮捕されたりすると思い込む人もいるが、論点がズレている」と述べる。「表現の自由」を規制するために制定されたものではないと強調した。  昨年、米国家安全保障局(NSA)の機密文書を公開した英紙「ガーディアン」が議会に召喚される騒動が起きた。日本でも今後似た事例が起こる可能性もあるが、流出時にメディアが責任を取れるわけではない。秘密管理と知る権利のバランスが重要だ。  特定秘密の指定範囲のあいまいさにも疑問が残る。瀬畑氏は「完全に秘密を限定するのは難しい。ある程度拡大解釈ができないと法律として機能しない」とする一方で「無尽蔵に秘密を増やしてはいけない」と話す。独立・中立の第三者機関が必要だが、設立されるのは官僚から構成される政府内の機関。瀬畑氏は「秘密を統一的に管理する法律は必要だが、この法律は不備が多すぎる」と指摘する。  不備が多い法律に、私たち学生はどう向き合うべきか。「民主主義を支えるものは情報。情報が正しく公開されないと、国民は国政参加の場で政治的判断を誤ってしまう」と瀬畑氏は続ける。メディアの煽りに流されず、情報公開の観点から冷静に向き合っていくことが必要だと訴えた。