「従来までの図書館のあり方が果たして今の学生に合ったものなのかな、ということは常に考えています」。そう話すのは大阪大附属図書館職員の久保山健さんだ。阪大にラーニング・コモンズができたのは2009年。大学主導のもと作られ、全国的にも先駆的な試みとして注目を集めた。また、昨年には「グローバル・コモンズ」という、海外の新聞を読むことができる新たなコモンスペースも作られた。久保山さんはグローバル・コモンズ設置前の学生インタビューや、テーブルなど什器類の選定に携わった。  大学図書館員の多くが、「大学図書館は利用方法やありようを考え直す時期にある」と口をそろえる。その背景には、近年の大学図書館が抱える問題が3つある。今年「コラボレーションコモンズ」ができた関西大、「ラーニングコモンズ」ができた神戸女学院大などに取材した。  1つ目は、「図書館資料の電子化やインターネットの急速な発展」。ほとんどのラーニング・コモンズではノートパソコンやタブレットなど、電子端末を借りられるようになっている。それには学生とインターネットが切っても切れない関係となったことが深く関わっている。  2つ目は、「大学における新しい授業形態の導入」だ。関大や神女院大でも、グループで話し合い、発表を行う授業が増えたことを受け、パワーポイントなどを大きなスクリーンで共有できるように小型プロジェクタの貸し出しも行っている。今や図書館は1人で黙々と学習するスタイルだけではない。  3つ目は、図書館が「敷居の高い場所」という学生の固定観念。これを切り崩すべく、同志社大や関大のコモンスペースは図書館外に作られている。関大のコラボレーションコモンズのコンセプトは「気軽に行ける場所」。図書館のイメージを打破する一歩としてラーニング・コモンズが学生に寄り添う学習の場となっている。  「学生の学習に少しでも役に立ちたい」と問題解決に奔走する大学図書館員。ラーニング・コモンズの誕生により、場所として図書館と学生の距離が近づいてきている感覚はあっても、そこに図書館員という存在は果たして映っているのだろうか。図書館側は常に学生の声を求めている。久保山さんも、「どうすれば学生に喜んでもらえるだろうか」ということが図書館員としての悩みであり、やる気の根源だと話す。  大学図書館が過渡期にある今、目指す形は大学教育のためだけではなく、学生と職員が共に学びの形を考えていく「つくる図書館」なのかもしれない。