【12月号掲載】再考 大学ブランド
大学の「ブランド力」は低下しているのか。もしそうだとしたら、その中で大学生はどのように振る舞うべきか。大規模私立大学における入学歩留まり率(合格者が入学する割合)が、関関同立では25から36%と低い数値にとどまっていることが大阪市北区のNPC大学問題研究所(以下、NPC)による調査で明らかになった。関西の私大における「ブランド力の低さ」を例に取り、大学のブランドとは何かを考える。
◎関関同立の「没個性化」
同調査によると歩留まり率は慶応義塾大で71%、早稲田大で47%であることから、関西私大が関東の大学と比べても大きく水をあけられていることが分かった。
NPCの所長、阿部功氏は関西私大について「大学としてのアイデンティティーが希薄化してきている」と分析する。関関同立における学部新設の傾向がそれを体現している。
立命館大は1988年、国際関係学部を設置。西日本初の試みで、「経営戦略の一大特徴」(NPCの調査より)として高く評価されてきたが、同志社大が2011、2013年度に相次いで国際系学部を設置するなど、他大学もそれに追随。「立命だけがいいというわけではない」と立命の広報課もコメントするなど、各大学に強みが見られない状況だ。
阿部氏は「大学が生き延びる上で質の向上が欠かせない。ブランドのあり方とは『他の大学との違いをどう表現・発信していくか』だ」と強調する。
国際基督教大(ICU)は1つの答えを見いだしているようだ。1人の教員あたりの学生数が19人と、少人数教育を展開。阿部氏も「マンモス化を図っておらず、個性的な大学」と話す。さらに入学後に専攻を選択できる制度など、その教育システムは特徴的だ。
◎自分自身にブランドを
一方で、大学研究家の山内太地氏は関西私大のブランド力が低下しているわけではないと主張する。関西には有名国公立大が多く存在するため、私大に入る学生が関東と比べ少なくなってしまうと分析。決して関西の私大が関東の私大より劣っているわけではないという。
「真のブランド力とは教育や研究の質の高さ」と山内氏。日本の私大は教授1人あたりに対する学生数が多く、指導が行き届かないと問題点を指摘する。
昨年11月、日本有数の学生数を誇る早大が2032年までに学部生を減らすと発表した。目的は「教育の質と密度を高めること」(広報課)。しかしその目標値は4万3978人から3万5000人へのおよそ2割減に留まり、教員に対する学生数は前述したICUに比べ依然として多い。大幅な削減は経営面からさまざまな問題が生じるため、総合大学では「ほぼ不可能」と山内氏は話す。
「大学生活で生き残るには、大学をうまく使わないといけない」。山内氏は現在の大学のあり方をそう話す。「世界レベルで見ると日本の大学はどこもグダグダ。自分で考えて行動するしかない」と断言。大学に入学しただけで満足せず、そこでトップを目指したり、留学やインターンに参加したりと自ら世界に目を向け、グローバル人材になることが自分の個性を生み出す方法の一つだと提示する。今、大学生には主体的に行動し、自らのブランド力を高めることが求められている。
(参考)関関同立の新設学部一覧とその歴史
◆立命館大
1988年 国際関係学部を設置
1994年 政策科学部を設置
2001年 産業社会学部に人間福祉学科を設置
2008年 薬学部を設置
2010年 スポーツ健康科学部を設置
◆関西大
2007年 政策創造学部を設置
2009年 外国語学部を設置
2010年 人間健康学部、社会安全学部を設置
◆関西学院大
1995年 総合政策学部を設置
2008年 社会学部の社会福祉学科が分離独立し、人間福祉学部を設置
2009年 教育学部を設置
2010年 国際学部を設置
◆同志社大
2004年 政策学部を設置
2008年 スポーツ健康科学部を設置
2011年 グローバル・コミュニケーション学部を設置
2013年 グローバル地域文化学部を設置
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